マーケティング分野では「共感」という言葉が重視されています。しかし広報としては、さらに企業や製品・サービスを消費者に「応援したい!」と思ってもらいたい。それにはどうしたらいいのか。筆者の遠藤眞代氏は、スーパーで手にした「あおのり」にそのヒントを見つけました。

今回のテーマの発端となった三島食品の「あおのり」
今回のテーマの発端となった三島食品の「あおのり」

 広報であれば「企業や商品のファンになっていただくにはどうすればいいのか」という問いに、何百回も頭をひねらせているでしょう。誰もが考えている大きなテーマだけに、ズバリこれだという結論は出せません。しかし、広報として感銘を受けた例を紹介しながら考えていきたいと思います。

 よく「ファンづくり=共感」と聞きますが、広報的には「共感」が最終目標ではありません。企業やブランド、商品、サービスに対し「応援したいと思っていただく」ことを目的にすべきでしょう。応援したいという気持ちは、共感や好感の先にあるものです。共感や好感をベースにしながら、「がんばれよ!」という気持ちを醸成し、さらに行動に移していただけるような情報発信ができてこそ、広報冥利に尽きるというものです。

ファンではないけど、買った「あおのり」

 一般に、企業側の人間が「応援していただいているな」と実感するのは、次の2つのケースではないでしょうか。

 (1)自社の商品やサービスに対価を支払ってくださった場合
 (2)企業の代弁者となって、商品やサービスを紹介してくださった場合

 応援してくださる方は、(1)と(2)の両方に属する方もいれば、(1)だけ、あるいは(2)だけに属する方もいらっしゃいます。(1)には性能や機能が良い、他に選択肢がなかったなど、ニュートラルな気持ちで商品やサービスを購入した方も多く、「応援したい」とまでは思っていないのが普通でしょう。気持ちがどうであれ、一定の評価をいただかなくては(1)という行動にはつながりませんが、より踏み込んだ広報活動からすると、(2)の重要度が高まっているように感じます。

 (2)は、マーケティング的には「アーンドメディア(Earned Media)」と呼ばれている部分にあてはまります。定義は諸説あるようですが、「Earn」 は「得る・獲得する・受ける」といった意味で、アーンドメディアは第三者の信頼や責任に基づいて情報が発信されているメディアを指します。ニュースを扱っているマスコミ(広告は除く)の他、ユーザーが情報発信するSNSやブログなどがこれに該当します。まさに広報が担当している領域ですので、今回は(2)について掘り下げていきたいと思います。

 (1)に属する「何となく買った」というクラスターには、何かの拍子で(1)と(2)が重なる「ファン」のカテゴリーに移行することがあります。そのきっかけをどう生み出すかが広報的には大切です。

 つい先日、スーパーマーケットに青のりを買いに行きました。のりコーナーの棚には2種類の青のりがあったので、まずはコスパを確認。値段は同じくらいなのに、内容量が2倍近く違う。どうしようか考えあぐねていたら、緑色のパッケージの製品に書かれた「三島の青のり ファンのみなさまへ」というメッセージが目に入りました。私はファンでもないけど……と思いながら、とりあえずパッケージを裏返しました。

パッケージに「三島の青のり ファンのみなさまへ」の文字が
パッケージに「三島の青のり ファンのみなさまへ」の文字が

 裏面には「記録的な不漁で『すじ青のり』が確保できない」「養殖など努力しているが時間がかかる」「今できる精一杯の青のりを準備」といった内容に加え、これに伴って伝統の「青いパッケージ」で作れなくなったと書かれていました。そのため製品名も「青のり」ではなく「あおのり」になったのでしょう。

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『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』

『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』
2021年12月28日発行
 連載「風雲! 広報の日常と非日常」が本になりました。これまで3年半以上に及ぶ、約150本のコラムの中から、「マスコミ対策」に焦点を絞って再編集。企業や個人までも手軽に情報発信できるSNSがもてはやされる今日ですが、“バズった”記事の出どころをたどると、マスコミの記事や番組であることが少なくありません。だからこそ、企業は「情報の源流」でもあるメディアへの対策を十分に練り、正しい情報を伝え、記事や番組として発信してもらう重要性がこれまで以上に高まっていると言えます。本書は連載でおなじみの現役広報パーソンである二人の著者(鈴木正義氏、遠藤眞代氏)が、20年以上にわたる記者や編集者との生々しい駆け引き、社内でのあつれき、成功談・失敗談から導き出された「記事や番組に採用されるためのテクニック」「メディアとの関係構築法」「危機感管理術」などを、当時の現場の様子や本音を交えながらリアルに書きつづっています。読み物としても楽しめる中身の濃い1冊に仕上がっています。

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