プレスリリース内に登場する、注釈があることを示す「※」マーク。広報にとってはメディア側に誤解を与えないように、また記載した情報の裏づけを示して自社を守る意味でも便利な記号です。しかし使いすぎると文章が読みづらくなったり、スルーされたりして記者に“地雷”を踏まれてしまうことも……。使い方のコツを説明します。

便利な「※」マーク、効果的に使いましょう ※画像はイメージ(画像提供:とり/PIXTA)
便利な「※」マーク、効果的に使いましょう ※画像はイメージ(画像提供:とり/PIXTA)

 広報の仕事には“地雷”ともいうべき、業務に伴う多くのリスクがあり、それに応じて明文化されていない地雷回避術が数え切れないほどあります。大企業の広報であれば事業規模は大小さまざま、なおかつ扱う案件の幅も広いため、地雷を踏んだり踏ませたりするリスクは高い。決してほめられたものではありませんが、私自身、ソニーの広報時代に何度もやらかして、結果的に地雷回避のノウハウがたくさん集まりました。

 分かりやすい“地雷原”の例がプレスリリースです。もちろん広報はメディアの記者を陥れるためにリリースを作成するのではありません。とはいえ、記者に誤解を与えるような表現や出所の不確かなデータが盛り込まれれば、正確な情報が伝わらず、結果的にそれらが広報の意に反して“地雷”となり得ます。長年リリースを作り続けていると、地雷となりそうな情報や文中に潜んでいそうな場所はおおよそ見当がつくものです。しかし、ときとして想定外の場所に地雷が埋まり、それを記者に踏まれてとんでもないことになる恐れもあります。

 そんなリスクを回避するのに便利な手段が「」マーク、そう注釈の活用です。私はいつも「米印」とか「コメ」と呼んでいますが、英語では「REFERENCE MARK(レファレンスマーク)」と呼ぶようです。リリース文の最後のほうにある注釈は文字も小さいですし、スルーしてしまうこともあるかもしれませんが、実はとても重要な役目を果たしています。そこで今回は広報がリリースを作成する際に「※」を使うポイントを、私がかかわった実例を使って説明します。

世界一、業界初などは裏づけを明確に

 2007年10月1日にソニーが世界初の『有機ELテレビ』を発売した際のリリース。以下のような構成でした。

世界初※1 有機ELテレビ発売

~最薄部約3mm 未体験の高画質~
 ソニーは、世界初※1の有機ELテレビ「XEL-1」を発売します。「XEL-1」は、11V型で最薄部約3mmという、新しいテレビの形を提案します。さらに、コントラスト比、ピーク輝度、色再現性、動画性能の全てにおいて優れた性能を実現する自社開発有機ELパネル「オーガニックパネル」※2を搭載し、未体験の美しい映像を表現します。

※1:2007年10月1日現在、ソニー調べ
※2:ソニーの有機ELパネルのデバイス名称

 「※1」の役割について見ていきましょう。「世界初」を補足するために、「いつ時点(When)の情報なのか?」「誰が(Who)調べたのか?」という情報を注釈で補足しています。地球上で唯一無二、「世界初」の製品を発表する経験は少ないかもしれませんが、「日本初」や「業界初」としたためたくなるときもあるでしょう。例えば、「日本初」であれば「世界初」と同じように場所を明確に特定しているので、注釈では「世界初」と同じく「いつ時点(When)の情報なのか?」「誰が(Who)調べたのか?」を補足します。

 似ているようで異なるのは「業界初」です。「業界初」とした場合、「家電業界において」とか「化粧品業界において」「金融業界において」など、「どこ/何(Where/What)の話」なのかを、「いつ時点(When)の情報なのか?」「誰が(Who)調べたのか?」に追加して記載するのがいいでしょう。

 「世界一」や「日本一」についても「いつ時点(When)の情報なのか?」「誰が(Who)調べたのか?」を補足し、後に続く言葉によっては「どこ/何(Where/What)の話」が必要です。

 「〇〇初」や「〇〇一」という表現は、以前書いた景品表示法の優良誤認に抵触する可能性が高いので、事実関係を確認しないまま記載することはリスクになります(関連記事:「薄めても『原液』なの? 業界が違えば表現の範囲も変わってくる」)。自分の首を絞めることにならないよう、しっかりと裏を取りましょう。「世界一かわいい」といった主観的な表現もリリースや広報文書には不向きなので、避けたほうが無難です。

「※」を付けた注釈はどこに置く?

 次に「※2」の役割について見ていきましょう。これは「定義づけ」「条件の明示」を表しており、初出の「オーガニックパネル」を定義するための注釈です。世に出すまで手塩にかけて育てた商品やサービス、独自技術の固有名称が何を指すのか、当然社内には共通認識があるでしょう。しかし、一般の人からすると「なんのこっちゃ?」ですから説明が必要です。自社の技術でなかったとしても、一般的ではない技術などについては注釈を入れるか、あるいはリリース内で定義を明確にしておくと読み手の理解も進みます。

 リリース中に「〇〇が可能」と書くことがあります。とはいえ、ある条件下では「〇〇が可能ではない」こともあります。こうした場合、「※」を付けて設定条件を決め打ちで書いてしまうか、除外条件を書くか、いずれかを記載します。いわゆる“ただし書き”的な使い方です。例えばスマホアプリを発表するけど、OS(基本ソフト)が古いと使えない場合。古いバージョンのOSでは使えないと書くのか、最新バージョンなら使えると書くのか、みたいなイメージです。

 注釈の置き場所ですが、特にタイトルやリード文にある「※」は後注ではなく、リード文のすぐ下に脚注として処理したほうがいいでしょう。タイトルやリード文にある「※」の説明を最末尾に置いてしまうと、読み手の集中力が切れるでしょうし、注釈を読んでもらえなかった場合、誤認されてしまう恐れがあるからです。

 ただ便利だから、地雷回避のためだからといって注釈に頼りすぎると、リリース作成が大変になります。特に多くの注釈を連番で用いた場合、注釈が入り乱れて大混乱になることも。ですから注釈が不可欠なものや、それが無いと読みづらくなるケース以外は、可能な限りリリースの文章中で説明してしまうほうが広報的にはラクです。また、商標関係などの免責文については本文とはひもづけず、数字も入れず単に「※」として最後尾などに列記してしまうのも手ですね。

 広報がリリースで誤った認識を与えてしまうといった「地雷」を記者に踏ませないためにも便利な「※」ですが、ぜひ、うまく使いこなしてください。