プレスリリースを眺めていると、製品名やサービス名のすぐ後に「Rマーク」が付いているのを目にしたことがある人も多いでしょう。これはその名称が登録商標であることを表していますが、そこに明記する必要はあるのでしょうか。見た目もよくないですし、読みにくい感じもします……。そんな疑問について考えてみました。
春休み、我が家には子供の教科書やノートが山積みされていました。たまには勉強でも見てあげるかと、教科書をパラパラとめくってみました。ふと家庭科の教科書を開くと、メーカー出身者としてはなじみ深いマークが紹介されているではないですか。なるほど、品質、環境、分別収集という区分に分けているのか……。
品質マークにはJIS(日本産業規格)マークやJAS(日本農林規格)マーク、特定保健用食品マークなどが、また分別収集マークにはなじみの紙パック、アルミ缶、ペットボトルなどのマークが並んでいます。環境マークにはグリーンマーク、エコマーク……あれ、間伐材マークなんてものがあったっけ。そういえば京都議定書が話題に上っていた頃、ソニーの新商品プレスリリースでは、該当商品がどのような環境配慮をしているかを入れ込むようにしていて、環境系のマークに関して勉強した記憶があります。
商品に貼られている記号やマークは、見たことがあるといった程度で、その正確な意味について調べたことのある方は少ないのではないでしょうか。実は私もその1人です。そこで今回は、広報が知っておきたいマークについて紹介したいと思います。
知っているようで知らない「Rマーク」
商品パッケージなどで商品名の右上辺りに書かれている「(R)(※ Rを丸で囲んだ表記、以下同)」という表記を見かけたことはあるでしょう。「R=registered(Trademark)」、通称R(アール)マークと呼ばれています。この辺りまでは皆さんご存じだと思います。肝心なのは、ここから先です。
こう、特許庁のホームページに書かれているのです。ご存じでしたか。日本で登録商標済みの商品に、Rマークを表示する義務はないということです。また「TMマーク」も同様で、日本の制度に基づくものではないとのこと。「単にTrademark(商標)を意味するもので、未出願の商標や出願中の商標について付されることが多い」そうです。では、どうするのでしょうか。
このように特許庁のホームページに書かれています。表示したいと企業側が思った場合、日本の書き方はちょっと長すぎるので、使いやすいRマークが普及したのでは、と勝手に想像しています。
プレスリリースで登録商標をどう表記するのか
自社の商品名やサービス名について、それが登録商標であることをプレスリリースなどで言及しなかったとしても、他社に訴えられるようなトラブルは起きません。しかし、自社のリリースやカタログの中に、商標を登録している他社の商品名やサービス名を記載する場合は配慮が必要です。ましてや、あたかも自社の商品やサービスかのように表現するのは言語道断です。
例えばAというスマートフォンに接続して使用するイヤホンBを発表したい。Bのプレスリリース中にAと接続して使用できるということを書きたい場合、Aのメーカーに対して社名や説明文を入れてよいか確認するのはもちろんですが、必ず以下のような注釈をプレスリリースの中に入れておくべきです。また英語圏で発売するなら英語の文章で入れないといけません。
※“A”およびそのロゴは、○○株式会社の日本国およびその他の国における登録商標または商標です。
皆さんが知っているような会社が持っている商標であれば、ネットで検索すれば登録商標の表記ルールを見つけることができます。ちなみに米アップルであれば、以下のように表記するように書かれています(日本国内販売の場合)。
_________ は、米国およびその他の国で登録されたApple Inc.の商標です。
_________ は、Apple Inc.の商標です。
またYouTubeであれば、こんな感じです。
※YouTube および YouTube ロゴは、Google Inc. の商標または登録商標です。
では、前述のRマークは使わないのかという話です。プレスリリースを紙で配るのが主流だった頃は結構使っていましたが、インターネットの時代になってからあまり使わなくなりました。そもそも表記する義務もないですし。印刷のように「(R)」と小さなフォントの上付き文字で表記できればかわいいのですが、インターネットで表示させるときは、文字化けしない(R)などで表示せざるを得ません。プレスリリースは読みやすくないといけないので、これだと文章が読みづらくなる恐れがあることから、私は使わなくなりました。
このようにプレスリリースやカタログ、商品パッケージなどなど公式文書には小さな文字で書かれている文字列が存在します。次回は、今回ご紹介できなかったプレスリリースの最後尾などにある「誰も読まないかもしれないけれど、結構重要なことが書かれている注釈」について紹介しようと思います。