広報がプレスリリースを作成する際、メディアや消費者に誤解を与えないよう表現には細心の注意を払います。しかし、業界が変わると言葉の意味合いや表現の範囲が変わってくることもあります。たとえ法律に違反しなくても、業界の認識と消費者の受け止め方にギャップが生じそうな場合、表現に気をつけなくてはなりません。

「原液」と言われてあなたはどんな印象を持ちますか? ※画像はイメージ(画像提供:July Prokopiv/Shutterstock.com)
「原液」と言われてあなたはどんな印象を持ちますか? ※画像はイメージ(画像提供:July Prokopiv/Shutterstock.com)

情報が詰まった化粧品販売員の手作り資料

 (1)コロナ禍で調子に乗って毎日晩酌していたら太ってしまい、ダイエット開始
 (2)急激な食事制限でシワが目立つようになる
 (3)劣化改善のためにアンチエイジングの化粧品に手を出した

 2020年のプライベートを振り返るとこんな感じでした。今回はそんなこんなで足を踏み入れたアンチエイジングの世界で気づいた話からスタートしようと思います。

 私は地元の雑居ビル内に直営店を構えるノンブランドメーカーの化粧品を使っています。コストパフォーマンスが良く、お店の方が色々と教えてくださるのが気に入っています。

 そのメーカーは「広告を出さずに中身で勝負」なので、価格を安く設定しているというのがウリで、成分説明に対する思い入れが大変強い。お店に行くと、顔がピカピカ光っている白髪交じりの男性販売員さんが出迎えてくれます。

 今や私は“顔”なので、その販売員さんとは商品を指名買いできるような間柄ですが、初めて訪れた方は販売員さん手作りの資料を手渡されるでしょう。商品によりますが、資料はA4用紙5~10枚ほどで、インクをかなり使っていることが分かるほどの文字の密度です。その販売員さんが調べたであろう文字情報と、どこぞから引っ張ってきたであろうグラフや図表で構成されています。老眼には若干厳しい資料なので、それに目を通して内容を詳しく聞く人は、相当な変わり者ではないかと思ってしまうほどです。

 もちろん私は、新製品が出るたびに座り込んですべての資料に目を通します。その資料を見ると販売員さんの苦労が手に取るように分かりますし、それを基に繰り出す私の矢のような質問攻めにも、テンポよく的確に回答してくださるのが心地よくて、定期的に通っています。

 前段が長くなりましたが、ある時、その販売員さんから「『原液』って書かれている商品が売られていたら、どんな商品だと思います?」と質問されたことがあります。私はすかさず「その成分がそのまま100%入っている、ジュースなら搾りたて、搾ったままの100%の濃いジュースってイメージ」と答えました。それに対する販売員さんの答えは意外なものでした。

 「そう思いますよね。実は化粧品の場合、⽔で希釈しても原液が⼊っていれば『原液』ってうたえるんですよ」

 勝ち誇ったような顔。彼のプレゼンの山場はここだったのか。

 「えええええぇ! 知らなかったぁぁぁー」と声を上げる私に、すかさず「〇〇ってメーカーご存じですよね。原液って書いてあるけど、うちのほうが〇倍も入っているんですよ……」と。「ああ、参りました。買いますよ。ああ買いますよ」と私。毎回、新製品が発売されるたびに、こんな感じのやり取りをひと通りこなし、「やられた」と感じたときは買うようにしています。

 原液のままだと肌に浸透しづらい成分の場合、そもそも界面活性剤などを入れないと化粧品として成立しないものも多いそうです。ですからボトルに「原液」と書かれている商品が水や油、界面活性剤などで希釈されているは当たり前の話ですよね。確かに豚の胎盤がそのまま肌に浸透するわけない……。業界が違うと知らないものですね。勉強になります。

 ちなみに化粧品のパッケージやホームページを見ると、全成分表示という表記があります。これは入っている成分の多いものから表記しなければならないのがルールなので、最初に「水」と書かれていたら水の含有量が最も多いということになります。気になる方はチェックしてみてください。