映画やドラマの中で、よく知っている企業の製品を見かけることがあります。「プロダクトプレイスメント」という定番のマーケティング手法ですが、製品を貸し出す企業にとってはどれくらい効果があるか迷うもの。しかし、あからさまながら巧みに取り入れる韓国ドラマを見ていると、広報として「アリ」という思いが湧き上がってきます。

プロダクトプレイスメントとはいえ、ちょっとやりすぎ? ※画像はイメージ(画像提供:GoodStudio/Shutterstock.com)
プロダクトプレイスメントとはいえ、ちょっとやりすぎ? ※画像はイメージ(画像提供:GoodStudio/Shutterstock.com)

映画やドラマからの製品貸し出し依頼

 韓国エンタメにハマっていると前回の記事で書いた通り、Netflixなどの動画のサブスクサービスにも大変お世話になっており、時間さえあれば韓流ドラマを見ています(関連記事:韓流エンタメに“沼落ち”した広報が、BTSから学んだファン心理)。韓流ドラマの楽しみ方はいくつもあるのですが、そのうちの1つは出演者がおいしそうに食事をする(通称:モッパン)のシーン。そしてもう1つは、物欲を刺激してくる小道具の数々。そこで今回は、広報の立場からドラマや映画などへの商品貸し出しについて紹介しましょう。

 大企業の広報であれば、映画やテレビドラマの制作会社から製品の貸し出しを依頼(無償)されるのは日常茶飯事でしょう。監督や制作者サイドが作品中にどうしても“アレ”を使いたいという要望があったりします。このような場合、制作者サイドとしてはどうにかして無償で貸してほしいと考えるものです。当然、レンタル業者に依頼すればお金がかかりますから。

 一方、製品を貸し出す企業側としては、放送もされていないテレビ番組や映画のタイトルだけで貸し出してマーケティング効果があるのか、貸し出すべきなのかどうかを判断しなければなりません。貸し出し依頼を受け取った時点で出演者が確定していないこともありますし、貸出期間も長く、貸出機の数も限られていて、お断りすることもあるでしょう。映画やドラマの中でちらっと映るものの、最後のトレーラーに企業や商品のロゴが入るだけで、果たしてどれほどの効果があるのでしょうか。そうした理由で、事業部門に一蹴されてお断りしたことは何度もあります。

 昔は貸し出した映画やドラマで露出して終わりでした。しかし、現在はインターネット上にドラマや映画で使われた小物や洋服などをまとめたサイトがいくつも存在します。演者のファンやドラマを見て気になった人が、お客様になり得ることを念頭に置いてもいいでしょう。

 面白いもので“全く違った角度”から話が入ってくることもあります。いわゆる「プロダクトプレイスメント」を請け負っている代理店から、広告出稿の一環として「貸し出しをしないか?」と話が来るケースです。言うまでもなく、プロダクトプレイスメントとは映画やドラマの劇中で、実在する企業の製品やサービスを使った、昔からある広告手法です。同じ製品の貸し出しでも、無償とお金を払うのとでは大違い。驚きますよね。

面白いほど露骨な韓国ドラマ

 日本の映画やドラマの多くは、自然な形で作品に溶け込むような演出で製品が登場します。それが普通だと思っていたので、私が韓国のドラマを見始めた頃、露骨にプロダクトプレイスメントだと分かる演出に驚きました。不思議なもので、見続けていたらそうした製品を見つけるのも楽しみの1つになっています(関連記事:米Netflixにプロダクトプレイスメント続々?)。

 最近の韓流ドラマでモッパン関係のプロダクトプレイスメントで印象に残っているのは、『愛の不時着』の「bb.qオリーブチキン」(韓国風フライドチキン)、『賢い医師生活』の「EGG DROP」(ホットサンド)、『青春の記録』の「SUBWAY」、『ザ・キング』の「THE ALLEY」(タピオカドリンク) などでしょうか。

 また、屋台や居酒屋シーンでは必ずと言っていいほど韓国焼酎の「チャミスル」が出てきます。ビールの小瓶ほどの大きさで、緑色の瓶のアレです。そしてオフィスシーンでは、給湯器の前で「マキシム」のインスタントコーヒーを作るのも定番です。単純なもので、何度も何度も演者のモッパンシーンを見せつけられると、何が何でも食べたくなり、胃袋をつかまれ、お店の場所を検索するようになります。2020年末にはドラマの再現レシピを紹介した本なども発売されましたし、私だけでなく多くの方が同じように思っているのではないでしょうか?

 「主人公は貧乏なはずなのに、高価なスマートフォンや高級外車を普通に持っているのはおかしい」と言いたくなるところをぐっとこらえ、劇中のプロダクトプレイスメントを観察するのも楽しいものです。

 特に最近の韓流ドラマでは、サムスン電子のスマホ「Galaxy Z Flip」や「Galaxy Z Fold2」を使っているシーンがよく出てきます。いずれも折り畳めるスマホですが、折り畳み機能を生かしたデモンストレーションを主人公たちが劇中で丁寧に説明してくれます。ケースなしで自立させて動画を鑑賞したり、自撮りをしてみたり。さらには高校生の主人公が80歳のおじいさんに使い方を説明して、使えるようになるなんてシーンを盛り込んだドラマもありました。電話やメールのやり取りはもちろん、ペンを使ってスマホにメモをするなどの機能も、一部始終を丁寧に映像で知ることができました。私はGalaxyを一度も触ったことがないのですが、おかげで大抵の機能は説明できる自信がついたくらいです。

 クルマの場合は、すべての登場人物が同じメーカーという不自然な状況がよくあります。ハンドル操作せずに自動で駐車スペースに止めるパークアシスト機能を主人公が自慢するシーンも見たことがあります。

 これだけ読むと、唐突に商品の説明シーンが登場するように思えるかもしれませんが、そうではなくとても絶妙に織り込まれています。多くの場合、プロダクトプレイスメントの対象となる製品がストーリーを構成する重要な要素として機能しています。つまり脚本家や演出家が商品を熟知した上で、その特長を生かした台本や演出を考えていることに他ならず、ドラマで見つけるたびにいつも感心させられます。

 コロナ禍にあっては、ショールームや店舗に直接行きづらい状況が続きます。少し不自然だったとしても、韓国のプロダクトプレイスメントのようなPR手法を取り入れるのは、企業としてアリではないかと思う今日このごろです。渡韓ができるようになったら“聖地巡礼”と称して、ドラマに出てきたお店巡りをしてみたいものです。

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