メディアから依頼される取材内容は多岐にわたります。誰に受けてもらうかは、広報にとって悩みどころの1つです。社内で出したい人と、広報が出てもらいたい人が違う……なんてことも少なくありません。「広報は黒子に徹する」とはよく聞きますが、時には表に出ることも考えてみてはどうでしょう。

広報は取材で表には出ず、黒子に徹すべきなのか ※画像はイメージ(画像提供:metamorworks/Shutterstock.com)
広報は取材で表には出ず、黒子に徹すべきなのか ※画像はイメージ(画像提供:metamorworks/Shutterstock.com)

この取材、誰に対応してもらおうか……

 メディアから取材依頼を受けたとき、広報の頭の中では「この取材、誰に対応してもらおうか……」という言葉が駆け巡ります。会社側にとってはポジティブな印象を与えられる人がいい。当然ですが、実はこれが周りが想像しているより単純な話ではなかったりします。

 もちろん「この案件ならこの人!」と決まっていれば悩むこともないのですが、規模の大きな会社や、該当しそうな担当者が多いと迷ってしまいます。その「誰」を決めるまでに何日も要してしまい、取材の可否の返信に時間がかかってしまった経験もあります。もたもたしていると、「あそこの広報はスピード感がないなあ……」「なぜ早く決められないの?」と思われているのではないかと気がかりです。取材依頼を受けたら、翌日か遅くとも翌々日くらいには方向性くらいは伝えたいものです。

 取材対応者がなかなか決まらない理由ですぐ思い浮かぶのが、次の3つです。

(1)取材依頼内容にぴったり合う人がいない。
(2)社内で取材対応させたい人と広報が出したい人とが異なる。
(3)取材を拒否されている(発言すること自体、取材担当者にとってリスクが高い)。

 それでは個別に見ていきましょう。

 まず(1)のケースです。例えば事業全体の話、マーケティングの話、開発や企画の話を取材したいと依頼を受けた場合、全てについて責任を持って話せるのは事業責任者です。しかし事業責任者は忙しくて、頻繁に取材時間を確保できなかったりします。そうなると広報は、マーケティングや商品企画の担当者が勝手に他の部署やその事業全体の話をして大丈夫か、後で誰かにしかられないか、もしくは経営企画、マーケティング、設計、企画のオールメンバーで対応するのか……といったことに頭を悩ませることになります。

 こうした問題を解決するには社内でうじうじやっていてもらちが開きません。媒体や取材の規模(記事の大きさ)を認識した上で、取材内容の中でとりわけメインで聞きたいことが何なのかを先方にヒアリングすることです。そうすれば、取材対応者が自然と絞り込まれていきます。

 続いて(2)のケース。「あの人、話が面白くないのに出たがりなんだよね」――本当は実際に事業や商品を手がけた担当者に取材対応してもらったほうがいいのに、上司が出たがりで、その上司にお願いせざるを得ない……という場合です。

 実際は年齢や役職は関係ありませんが、「話が面白くない=記事になるだろう肝心なワードを話さない」では、記事がつまらなくなるので広報としても不完全燃焼で終わってしまいます。気の弱かった昔の私は、最適な対応者を指名できなかったため、取材中に何度も凍りつきそうになった経験があります。的を射ない受け答えでもんもんとする取材に、対応者は全く気づかない。この温度差は、最終的に記事への不満を生むので、誰も幸せになりません。

 そこで編み出した裏の手があります。「Aさんへご指名で取材依頼がきました」という優しい(?)嘘をつくことです。もちろん事前にメディアの担当者と口裏を合わせておくことが肝心です。こんなことをやらなくてもいいように、広報を信じて、取材対応者の指名は任せていただきたいなぁ、なんて思ったものです。そのほうが質の高い記事になりますから。

 最後に(3)のケース。これは会社として受けてもメリットが見いだせない、お断りしたいような取材依頼です。はなから話せない、そもそも話せることがほとんどない、下手に口を滑らせたら上司から雷が落ちるのが分かっている……そんな依頼を受けたい人がいるでしょうか。いないですよねぇ。これは広報もつらい。

 取材する側、される側、そしてその情報を受け取る読者や視聴者の側が、全員ハッピーとなるような落としどころを見つけ、そこへ導くのは広報の手腕といえます。その選択肢の1つは広報自ら前面に立つ方法です。広報の発言は会社としての発言でもありますし、リスクも全て広報が背負うことになるので、取材依頼に対して的確なハンドリングが可能となります。