広報は黒子であるべきなのか?

 数年前までは、当たり前のように開発者や企画担当者がスポークスパーソン(広告塔)となり、広報は黒子に徹すべきだと考えていました。取材対応者が決められず、他に選択肢がなく代打として対応をすることはあります。しかし、取材対応する人間の選択肢として、広報自身を含めることはありませんでした。これは業界ごとに異なるようで、ファッション系では広報がPRとして自ら広告塔にもなり、露出するスタイルが多いように思います。

 私は“黒子スタイル”が長いのですが、自ら表に出て活躍されている、かばんメーカー・エース(東京・渋谷)の広報、難波敏史さん(通称ジョニーさん)と話をする機会があったので紹介しましょう。

 ジョニーさんは男性誌や、女性誌、モノ系のメディアの方で知らない人はいないくらい、かばん関連では名の知られた方です。もともと華のある方で、テレビなどの媒体に出演し、トークショーも開催されるなど、自ら広告塔としての役割を果たされています。そんなジョニーさん、コロナ禍でまずSNSの活用を強化したそうです。オフィス内に専用スタジオを設けて商品を撮影。カメラマンも社員が務めるなど、基本的にコンテンツは自社で内製。特にインスタライブなど動画コンテンツを強化し、ブランドごとに月2回程度の頻度で担当マーケターと広報(PR)担当がかばんの選び方、使い方など、お役立ち情報を紹介しているそうです。

 担当者と広報で原稿を作成し、短いものもありますが最長20分の動画コンテンツ。ライブ配信の時間は、ブランドによって変えているとのこと。公開するのは昼休みや午後7時が中心。またライブはよく見られる午後10時頃に配信することが多いそうです。会社とは別に個人アカウントでYouTubeチャンネルも開設し、エースのファンになってもらえるよう楽しいお役立ち情報を発信する取り組みも始められました。従来の教科書通りの広報の役割に捉われず、柔軟に情報発信をされている姿勢はとても刺激になります。

 エースのジョニーさんに限らず、家電業界でも積極的にメディアのインタビューを受けている広報担当者がいらっしゃいます。スタートアップなどでは、コンテンツプラットフォーム「note」を使って広報自身の言葉で企業情報を発信する方も増えてきたようです。

 もちろんこうした情報発信のスタイルは、個人のキャラクターや企業のスタンスにもよります。対応する広報のキャラクターが弱いと力不足になる可能性があります。ですが取材対応に関して小さな視点で考えず、情報発信という広い意味で捉えれば、広報自身が積極的に広告塔になるのも1つの解答になる、と最近考えを改め始めています。