スポークスパーソンとしてのトランプ氏

 もう一つ、先に書いた通りこの選挙は少なくとも日本のメディアでの主役はトランプ氏でした。破天荒な言動で、とかく世間の耳目を集めたトランプ氏。政治家としての手腕は後世の評価に委ねたいですが、スポークスパーソンとしては注目せざるを得ないものがあります。

 「Make America Great Again」

 日本の中学生でも考えつきそうな単純なフレーズですが、こんなにもシンプルでありながら、方向性を端的に言い表した政治スローガンはかつて聞いたことがなかったように思います。分かりやすいといえば他にも、前回の選挙戦での「メキシコとの国境に壁をつくる」という映像が頭に浮かんでくるような発言。この分かりやすい言葉選びとトランプ氏の予想以上の躍進とは、無関係ではなかったと私は思います。

 一方、たびたびの問題発言、記者団との必要以上の対立など、いただけない側面も多々ありました。特にSNSを通した数々の発言は、どこまで広報担当と合意していたのか分かりませんが、独断専行のSNS発信をやられてしまうと、広報はもうお手上げです。自分は良いスポークスパーソンであるという自信がある人ほど、このリスクは大きいと思います。

街の声は最大の武器

 もう一つ、これは今回に限らずですが、選挙戦になると双方の主張を追うだけではなく、マスコミは「街の声」や「識者の意見」を実に多く拾います。特に両陣営の支持者といわれる人がどんな人なのかを通じて、我々はそれぞれの候補者の立ち位置や目指す国家像を理解できたと思います。

 我々企業の広報も、自らが情報発信するだけでなく、製品を使うユーザーの声や、専門家の批評、こうしたものをうまく活用することがあります。確かに自社の主張をストレートに伝えてもらうニュースはありがたいのですが、一方でマスコミは客観性のある意見を組み込む必要があり、一般のユーザーの声を拾うことがあります。そうしたときに、どういうタイプの人がその製品を支持しているかで、その製品のポジショニングが明確になります。

 例えば、「ライフスタイルにこだわった消費者の心に響く洗練されたデザイン」とリリースで書くよりも、販売の現場を取材してもらい、どんな人が買っているのかを見てもらうほうが、はるかに説得力があるということです。特に直営店のような店舗を持っている企業であれば、オシャレな若者でごった返す店内(時節柄ごったがえすのはよくないですが)を取材してもらえば、もうあとは放っておいてもこの会社の製品はどんなユーザーに支持されているかが伝わるわけです。

 海の向こうの大統領を決める選挙とその報道ですが、こうしてみてみると広報としてはいろいろ勉強になります。他にも広報視点でまだまだ発見があるのではないかと思います。