広報の仕事の1つに自社の情報を記事にしてくれる媒体の開拓があります。しかし既に開拓され尽くされていたり、発表会に招待しても記事にしてもらえなかったりと苦労が尽きません。筆者の遠藤眞代さんは、ソニー時代の“失敗”をきっかけに、新規媒体の開拓についてある思いを抱くようになりました。

新規媒体の開拓は可能性のある新しい土地を見つけて自分で耕すようなもの ※画像はイメージ(画像提供:Valentin Valkov/Shutterstock.com)
新規媒体の開拓は可能性のある新しい土地を見つけて自分で耕すようなもの ※画像はイメージ(画像提供:Valentin Valkov/Shutterstock.com)

発表会の案内でやらかした……

 新規媒体を開拓してこい――。

 広報担当者なら、一度は言われたことがあると思います。今回は自社の情報を掲載、配信してくれるような新規媒体の開拓について、一緒に考えてみたいと思います。

 まずはソニーの広報時代、私がメディアリストに関してやらかした“失敗”を紹介しましょう。忘れもしません、あるテレビの発表会での出来事です。

 その当時、発表会の案内は開催日の2週間前に送るのが通例でした。それなりの規模の発表会だったので、2部制で開催。第1部は報道系のテレビ、新聞、通信社、雑誌、ネットメディア、評論家、ライターなど。第2部は宣伝関係の媒体などに声がけをすることになっていました。

 大企業の場合、メディアリストの数は膨大です。その企業の全事業を追っている記者もいれば、カメラのようなある1つのカテゴリーだけを追っている記者、一度だけ取材に来ただけでご無沙汰になっている方もリストに入っています。会場の収容人数は150人だったので、膨大なメディアリストの中から選別して案内状を送付することになりました。

 先輩に相談して「あーでもない、こーでもない」とエクセルと格闘しながら、案内を出すことにした記者リストに残った人数は3桁。大体150人に収まるだろうという算段でした。リストの中には過去の出席率なども考慮して、絶対に出席すると思われるテレビ局、新聞、雑誌、ウェブメディア、ライターに加え、未確定要素はありますが出席する可能性のある媒体やライター、そして出席はしないだろうけれど連絡だけは入れておいたほうがいい相手が並んでいました。

 続いて、そのリストに基づいて案内状を配信。案内状送付した途端、FAXがピーピー鳴って出席の返答がどんどん出てくる。

 「いつもより、やたら反応がいいな」と思ってFAXを見たら、送ったはずのない媒体から返信が来ていました。まさかと青ざめたときには、既に遅し。リストを見やすいように、誰かが出席者以外を非表示にしてくれたのに気づかず、エクセルにあった全てのリストに案内状を送ってしまっていました。送った数は4桁です。

 会場があふれかえったらどうしよう……。出してしまった案内を撤回するわけにもいかず、不安な日々を送ることに。

 そして発表会当日。最終的な出席者は確か178人でした。体感的には、あふれるぎりぎりの出席者数で、関係者は「大盛況だった」と大喜び。ちなみに、そもそも声がけするつもりではなかった出席者は、10数人程度に収まっていました。なお、その10数人の記事を見た記憶はありません……。

 ソニーのような規模のメーカーであれば、メディアリストには関連のありそうな媒体は網羅されていると言えるでしょう。この失敗を通じて分かったのは「ある特定の分野を書く人の最大数はおおよそ決まっている」ということです。案内を出す数が問題なのではない。当たり前のようですが、書く媒体は書くし、書かない媒体は書かない、ということです。

新規媒体を耕すためにできること

 さて、そこで新規媒体の開拓ですが、これには2種類あります。既に「他の誰かが耕している畑」を探すこと、そして「肥沃な土地」を自分で耕すことです。

 耕されている畑を探すためには、まずはネットや「広報マスコミハンドブック」のような媒体リストが掲載されている書籍を参考にします。さらに競合企業の情報露出もチェックします。競合の記事が掲載されているということは、記事化してもらえる可能性が高いからです。

 偉そうに書いていますが、門外漢の業界で広報を担当する場合、そもそもどの媒体が書いてくれそうなのか見当がつかなくて右往左往しています。もし予算が許すのなら、その業界に明るいPR会社にメディアを紹介してもらうのも手です。費用はかかりますが、探す手間が省けますから選択肢に入れておいてもいいでしょう。

 既に大半の媒体を制覇していた場合は、誰も手を付けていない肥沃な土地を探したくなるものです。これは探すというより開墾するイメージで、時間がかかり、成功率も高くはありません。しかし粘り強く耕すことで、他にはない“素晴らしい実”をつけることがあります。楽しみ半分で、トライしてみる価値はあります。

 私の経験では耕されている土地も、誰も手を付けていない肥沃な土地も、既に耕されている土地のすぐ近くに隠れていたりします。具体的には、関係ができている媒体の競合媒体だったり、面識のあるライターの知人だったり、ということです。

 私は誤ってメディアリストの全員を呼んでしまった失敗を起こして以降、人数に余裕がある発表会では、多めに媒体やライターをリストに入れるようにしました。前述のように少しくらい多く声をかけても、興味を抱いてくれそうなメディアや記者の数は大きく変動しませんし、会場に入りきらないような事態はまず起こらない。むしろ「肥沃な土地」を発見できる可能性を高めるほうに、メリットがあると考えたからです。

 現在はオンライン発表会が多くなり、キャパに柔軟性を持たせられるので、比較的幅広いメディアに声をかけやすいと思います。その場合、興味があるかどうか分からないので、電話をしまくるなどの深追いをし過ぎないのが基本です。箸にも棒にもかからないような方に送るとクレームが来たりするので、注意しましょう。

 新規媒体の獲得は難しいですが、まずは面識のある媒体やライターについて、過去の記事化の実績や追っている分野、記者の興味、どこで執筆しているのか、誰と仲が良いのか、などをメモしておくといいでしょう。そうすることで、メディアリストを見返したときに「そういえば興味あるかも……」と思いついて、新規の売り込みにつなげられると思います。私も頑張らなきゃ!