プレスリリースでバズは作れない

 では、これを最初から狙ってやれたでしょうか。答えはノーです。前述の通り、今どきのマーケティングはとにかくバズらせたら勝ち、何とかバズらせましょう、ということでよく我々広報も加わって頭をひねって考えます。しかし、そんな上からお金を入れると下からガラガラポンとバズるアイデアが出てくるような仕組みはありません。

 「ネタを作ってバズらせよう」というもくろみは誰もが思いつくところですが、夢破れたPR動画がネット上に死屍(しし)累々と転がっています。

 ここで考えてしまいがちなのが「こんな動画を作りました」というプレスリリースを打つことです。しかしこれはほとんどの場合うまくいっていないと思います。冷静に見ると、ニュースになっているのは既にバズった動画であって、バズってもいない動画をニュースが取り上げて、そのニュースがきっかけとなって動画が大きくバズる、ということはまずないのです。

 その理由は、メディア側は動画自体が面白いかどうかはどうでもよく、報道している自分たちのニュースが面白いことが重要なのです。いくら動画そのものが面白いからといっても、その動画をただ紹介しただけでは、そこに報道の付加価値は生まれないわけです。

 企業のPR動画というと、何かしらプロモーションの目的があって作成されているわけですから、それなりの社会現象が起きていないと、単にその会社の宣伝の片棒を担ぐだけになってしまいます。そこはメディアとしても慎重になるわけです。

 SNSのバズ狙いで広報するときには、動画などが面白いかに加えて「それを紹介するニュースも面白いのか」という視点も必要でしょう。例えばこのPC-98のニュースの場合、PC-98とはどんな製品であったのか、どうして25年も使っていたのかという、SNSに群がった人がもう少し知りたいと思う要素を付加したことが面白いニュースになったのだと思います。

 自分たちなりに納得のいく仕上がりの動画を作ると、人はテンションが上がってしまうもので、つい「これ広報しようぜ」となりがちです。しかし、そんなときはちょっと冷静になって考えたほうがよさそうです。