専門媒体が発信する記事の影響力

 「鈴木さん、テレビ朝日から取材の依頼がきてますけど」

 発表の翌週、いきなりテレワーク中の私のパソコンにそんなチャットが飛び込んできました。こうなった経緯を追うため、時間を1週間巻き戻します。

 「PC Watch」というオンラインメディアがあります。その名の通りパソコンの専門ニュースサイトで、かなり熱量のある記事を毎回書いています。どれくらい専門的かといいますと、実は同サイトの記事を読んだ米メジャーリーグ、シカゴ・カブスのダルビッシュ有投手がツイッターで、

「この数年で一番敗北感を感じた。(略)最後まで読みきった結果、何に対しての商品かすら理解できんかった」

と白旗を上げるくらい、時にかなり専門的な記事を書くメディアなのです。

 その媒体が、まずX1 Foldについて記事を書きました。次にその記事が、記事提携している「フジサンケイビジネスアイ」紙に転載されていました。フジサンケイビジネスアイは「日経産業新聞」などと同じ産業関連の専門紙で、発行部数は全国紙には劣りますが、丁寧に産業界のニュースを報道しています。そしてその記事を、今度はテレビ朝日の番組スタッフが見つけて「これやろうよ」ということになったのです。まさに雪玉がゴロンゴロンと転がって、テレビという大きな視聴数を持つ雪だるまになったわけです。

 世の中には人のやっていることに、言い掛かりをつけたがる人がいるもので、広報はよくその標的にされます。よくあるのが「ウチの広報は、テレビや全国紙に大きく情報を出す力がないから、専門媒体ばっかりと付き合ってる」というものです。そういう人には、今回のテレビ露出は「この会社の広報は相当テレビ局にコネがあるんだなー。それに比べてウチの広報は……」というふうに見えていることでしょう。しかし、我々もしょっちゅう「テレビ的な」ニュースがあるわけではないので、それほど親しい関係を持っているわけではありません。ただ、雪玉がゴロゴロと大きくなっただけです。

 今回の発表は世界同時発表だったのですが、日本の露出は質、量ともに非常に良い結果だったと評価されています。これについては骨太な記事を書いてくれた専門媒体各社のおかげと思っています。専門性が高すぎて難解だとか、発行部数が少ないからといって軽んじるのではなく、そういった記事が他のマスコミに及ぼす影響力ということも広報の戦術として計算に入れておくべきです。

 もう少し戦略っぽく表現すると、どのメディアが誰に対し影響力を及ぼし合っているのか、そこまで計算して広報のプランを立てたほうがよいということです。今回はそんなことを再認識した製品発表でした。