コロナ禍の現在、広報の仕事をリモートで行う機会が増えてきました。取材や発表会をオンラインで、というのがもはや当たり前になりつつあります。ある意味不自由な環境ですが、だからこそ新しい広報業務の姿も見えてきます。

リモートで行う広報業務、ミスコミュニケーションに要注意 ※画像はイメージ(画像提供: elenabsl/Shutterstock.com)
リモートで行う広報業務、ミスコミュニケーションに要注意 ※画像はイメージ(画像提供: elenabsl/Shutterstock.com)

リモートでの広報発表文の確認プロセス

 フリーランスとしてパソコン1つで私が広報の仕事を始めたのは、2013年。企業に勤める広報スタッフのように、会社に常駐して業務に携わってきたわけではありません。それが今回のコロナ禍によって、企業内の広報スタッフもリモートで対応せざるを得なくなっています。そこで今回は、これまでリモート中心で広報業務をこなしてきた私の経験から、特に気をつけていることをお伝えしようと思います。

 リモートでもある程度の広報経験があれば、ルーティンの仕事はそれなりに回せます。しかしちょっとしたフォローが欠けると、情報の送り手と受け手の認識や意図が異なるミスコミュニケーションのトラブルが起こりがちです。

 例えば広報発表文に関する社内のミスコミュニケーションです。内容の「ちゃぶ台返し」や、変更したことが元に戻ってしまう「先祖返り」は、現実でも起こり得る恐ろしい事故ですが、リモートの場合はより慎重な対応が求められます。

 広報発表文は情報開示前に多くの人の内容確認が必要となります。最近、私はWeb会議システムのZoom(ズーム)と、クラウド上でファイルなどを共有するGoogle docsなどを併用して、参加者全員が同時に作業を目視しながら広報発表文を詰めるという方法をよく使います。実際の確認会議と同じようなイメージで進められ、Web会議も録画できて履歴が残るので、「言った、言わない」のごたごたがなくなります。

 社内規定などで上記のような方法が使えない場合は、メールで関係者に広報発表文のたたき台を送付し、内容確認をお願いすることになります。この場合、関係者全員に確認のお願いメールを送ると、同じ部署内の異なるメンバーから正反対の意見が送られてきて、“カオス化”してしまいかねません。ミスコミュニケーションを避けるには、各部署(商品企画、開発、営業など)の代表者を1人決め、部署の意見をまとめてもらい、その代表者から返信いただくよう先手を打つといいでしょう。特にリモートの場合、掛け違えたボタンを直すのは、リアルの場以上に手間と労力を必要としますので、最初が肝心です。

 いずれの方法でもミスを減らす鍵になるのは、責任の所在を示す履歴や証拠を残すことです。各部署から吸い上げたコメントを反映し、広報でまとめたら、その都度(上書きではなく)新規保存しましょう。末尾に日時と名前を入れたファイル名、例えば「発表資料_09011730遠藤(9月1日17時30分に遠藤が保存した、という意味)」のようなファイルを作ります。

 面倒なようですが、都度新規保存をしておくと、変更履歴を振り返れますし、ミスが起こりづらい状況をつくれます。余談ですが、ファイル名に「Ver.1」といった表現を使う方もいらっしゃいますが、これは作成者しか分からない暗号のようなもの。修正者が誰なのか、いつ修正されたものなのか、作成者以外は分からないので、複数で回覧するには不向きです。

企業が伝えきれない部分を伝えてもらうために

 リモートでの作業の場合、多くの事柄をオンラインに置き換える必要があります。その際、オンラインで広報が提供できる情報は、これまで提供できていた「視覚」「聴覚」「触覚」「味覚」「嗅覚」の五感のうち、「視覚」と「聴覚」の一部に限られます。実物が見られない状況にあって、「視覚」に関しては、画面に映っていない部分がどうなっているのか分かりません。また「聴覚」は、余韻となるトークを切り取った状態で提供されているかもしれません。

 一般消費者として自分が商品を購入するプロセスを思い返すと、メディアへの情報提供について考えさせられることがあります。

 私は白物家電(生活家電)にさほど詳しくないので、炊飯器などを買う際はメーカーのサイトや店頭で調べ、スペックなどで絞り込みます。しかし、メーカーがうたっているスペックや売り文句を暗記できるほど調べ尽くしても、肝心の「ご飯の味」はどれも似たり寄ったりに思えてしまいます。そのため、知識を得た後にメディアの記事を検索し、実際に炊いて食べたと思われる方のレビューなどを基に決めるようにしています。

 こうした経験を重ねるにつれ、企業側が伝えきれない五感の部分を代弁してくれるメディアの価値と、記者に商品やサービスの理解を深めてもらう場づくりの大切さを痛感します。ネットで商品を購入する方が増えた現在はなおさらです。顧客の代わりに体験して報道してくれる記者が、商品とじかに接触できる機会を増やしたい。しかしコロナ禍がそれを簡単には許さない……。そうしたジレンマに悩みながら、withコロナ時代の今、取材やオンライン発表会などで、リモートを駆使した広報の手腕が問われているのだと自分に言い聞かせています。

 既にオンラインでのプレゼンや質疑に体験会を組み合わせている企業や、事前に商品を送付し、記者が商品に触れながらオンライン発表会に参加できるようにしている企業もあるようです。広報も今までの手法に固執している場合ではありません。リモートとリアルを柔軟に組み合わせたハイブリッドなプランを実行することで、メディアに対して新しい付加価値を提供する時代なのでしょう。それこそがwithコロナ、またアフターコロナに向けた「広報のニューノーマル(新常態)」と言えるのかもしれません。