取材する側にとって製品発表会の主役は必ずしも「新製品」とは限りません。幅広いメディアに伝えてもらうために呼んだ「タレント」がお目当てのメディアもあります。発表会自体は盛り上がりますし、テレビでの露出の可能性も高まりますが、裏で仕切る広報にとっては歓迎することばかりではありません。

タレントを呼んだ発表会は最後のフォトセッションが1つの山場です ※画像はイメージ(画像提供:vadimmmus/Shutterstock.com)
タレントを呼んだ発表会は最後のフォトセッションが1つの山場です ※画像はイメージ(画像提供:vadimmmus/Shutterstock.com)

「一般記者」対「芸能プレス」の衝突

 カメラの列にまばゆいフラッシュ、その中心にはわが社の新製品を手に持ってにっこり笑う人気タレント。カメラの放列の後ろで、勝利を確信する広報担当者であった――。

 「広報って華やかな仕事」と思われてしまう理由の1つに、こうしたタレントを呼んだイベントがあると思います。しかし、実際にタレントを呼ぶと、我々広報はうきうきする余裕などありません。むしろ「ああ、またあの問題が発生するのか……」と憂鬱な気分にさえなります。それは「一般記者」対「芸能プレス」の衝突です。

 一口にマスコミと言ってもいろいろな部署があり、それぞれ担う役割が異なります。分かりやすいのでテレビ局を例に説明します。

 午後の情報番組を見ていると、こんなやり取りがあります。

 「それではここでニュースです、報道フロアの〇〇さーん」

 これは、情報番組は生活情報局、ニュースは報道局という管轄の違いがあり、報道局はその性質上、特に独立性が高い。そのためワイドショーという生活情報局制作の番組内であっても、定時ニュースは報道局の管轄なので報道フロアから放送するわけです。

 私たち企業が開催する記者会見は、基本的に報道局の記者が取材し、その素材を報道局の判断でどうニュースにするかなどを決めます。一方、生活情報局には芸能ニュースだけを専門に追う「芸能班」といわれるチームが存在し、芸能人が出演する会見にはこの方たちも別チームとして取材に来ます。ただし狙いは企業の発表内容ではなく、ゲストに呼ばれたタレントの動向です。冒頭のフラッシュバシャバシャは、この芸能班の方々が中心の取材風景だと思ってください。

 つまり同じマスコミでも「報道」「芸能」という違う情報を求めている人が、同じ時間、同じ場所に集められるわけです。これの何が問題かというと、

  • 報道:製品の特徴や詳しい説明が取材できればよい。
  • 芸能班:タレントによるおしゃべり、フォトセッションが取材できればよい。

となります。そうなると互いに自分の取材を優先するが故に摩擦が起こります。その真ん中で、ごりごりすり潰されるのが我々広報というわけです。

 「ねえ、タレントの囲み取材早くしてくれない? 次があるんだよ」
 「ちょっと、芸能のプレス邪魔だよ。あんた広報だろ、仕切ってよ!」

というちょっと怖い感じのやり取りになります。ああ、何かもう、書いているだけで険悪な空気がよみがえってきます。ここまで読まれて、読者の方の中には芸能班が発表会の邪魔になってけしからん、という印象を持つ人がいるかもしれませんが、少し立場を変えて考えてみましょう。

 テレビ局にとっては、芸能ニュースも視聴率獲得には重要なコンテンツで、他社に後れを取るわけにいきません。また、「タレント〇〇さんが登場します」という取材案内を企業からもらっている以上、タレント取材をできるのが前提ですから、芸能班の立場からすると「ちゃんと仕事させてよ」となるわけです。それをないがしろにしては、「あの会社の広報ひどかったよ」となりかねません。発表会にタレントを呼ぶ以上は、芸能班のケアもしっかりする覚悟が必要です。