え、これだけ? タレントを呼んだ成果

 こうして険悪な雰囲気を何とか乗り越え、翌日テレビを見ると、朝の情報番組から午後のワイドショーまで、わが社の呼んだタレントが出ています。しかし内容は、「昨日都内で行われたイベントで、今話題の女優〇〇さんがカメラの前に登場しました……」というものが大半です。その後のタレントへの質問も「噂の人」についてばかりで、早々に舞台から退出……。

 確かにタレントはわが社のロゴの入った市松模様のパネルの前に立っていたし、会社のロゴは全国放送に映っています。しかし、これでは単なる背景で、天気予報の中継で遠くに映り込んでいるビルの看板とあまり変わりがありません。思わず「え、これだけ?」と言いたくなるかもしれませんが、私たち広報に言わせれば「こんなもの」です。

 社内から「何とかしてテレビの取材が来るよう企画してほしい」と強くプッシュされると、苦し紛れに「タレントを起用してみようか」という結論になりがちです。特にCM契約のあるタレントを動かせる宣伝部が発表会の企画に入っている場合、むしろ積極的に広告塔として活躍してもらいたいと考えるのが普通でしょう。発表会を今後のCM露出の予告程度に捉えれば、十分効果があると言えるかもしれません。

 しかし間違っても、「ひょっとすると、取材に来た人が新製品の魅力に気付いて、思いがけずしっかり紹介してくれるのではないか」などと考えないほうがいいでしょう。芸能班にも彼らが果たすべき役割があります。新製品の魅力をどれほど情熱的に売り込んでも、訪問すべき家の隣のドアをノックしているようなものですから、甘い期待は捨てるべきです。

 そんな割り切った考えで発表会にタレントを呼んだとき、やはり気を付けたいのが、会見場での「仕切り」です。

 繰り返しになりますが芸能班の目的はタレントです。会見が始まって、待てど暮らせどお目当てのタレントが登壇しないとなると、彼らもいら立ち始めます。芸能班を呼んだからには彼らなりの「取材」の機会をつくらなくてはなりません。そこで発表会の途中で「本日のゲスト登場」という流れをつくり、予定調和なトークショーを始めることになります。

 こうなると、今度は製品取材に来ているニュース媒体や記者から「そういう“作り込まれた”感想とか要らないから」「早く終わらないかなあ……」という空気が漂い始めます。こうした相克するニーズのバランスをとるため、2部制にする発表会もあるようです。

 タレントのトークセッションを「予定調和」と書いてしまいましたが、ごくまれにクライアントである企業の言ってほしいことを察して、どんどんアドリブを入れてくれる、しかも一般ニュースでも使ってくれそうなフレーズをうまくひねり出してくれる人もいます。それがまだ10代のかわいらしいアイドルだったりしますので、まさに“タレント”という言葉の意味(才能)を感じさせてくれます。こういうタレントさんは何回でも発表会にお呼びしたいですね。