世の中を動かすアングルを見つけよう

 もう1つ、話変わってここはお笑いライブ会場、ステージの上には寿司の折り詰めを片手に酔っ払いのサラリーマンの格好をしたコメディアンが登場。千鳥足の先にはバナナの皮が……。もう気の早い客席からはこれだけで笑いが起こります。コメディアンという職業は、実に巧みに観客の期待をコントロールします。このコメディアンのように期待度をコントロールすることは、もしかすると広報の最重要スキルと言えるかもしれません。

 これを先の事例に置き換えると、どんな新機能が盛り込まれるか分からないスマートフォンであったとしても、徹夜で行列ができるパターンが読めていれば、メディアは取材を検討し始めます。バナナの皮だけで笑いがとれるコメディアンと同じというわけです。

 では、広報におけるコントの「バナナの皮」に相当するパターンは何でしょう。当然ながら「笑い」ではありません。それはニュースを大きくするための「公共性のある話題」あるいは「世の中の動き」だと思います。

 以前、某テレビ局のスタッフルームに撮影用の新製品を届けに行ったとき、偶然ついたての向こうから聞こえてしまった会話を今でも覚えています。

 「でも、この内容だとこの会社の単なる宣伝になっちゃうだろ」

 その新製品は大きなニュースにするだけの公共性はあるのか、という点をチェックしていたのです。記者の立場として、扱うからにはニュースを大きくしたい願望があります。しかし大きなニュースにするには、公共性のあるアングルが必要だ、それを探せ、という会話でした。

 ここから学んだのは、自社のニュースを大きくするためには、何か公共性をプラスできるような要素を探し出すということです。そこにパターンを見つけられれば、それはあなたの会社にとって「バナナの皮」になるでしょう。時にそれは行列をつくって熱狂する人であったり、バレンタイン、海の日というような風物詩的要素であったり、あるいはテレワークや教育のIT化といった行政の取り組みだったり、ライバル企業との性能競争であったりと、「バナナの皮」はアイデア次第でいくらでも見つけられると思います(関連記事「広報同士の知恵が激突、ネタかぶりの『レッドオーシャンデー』」)。

 公共性のあるネタとは「世の中が動いているニュース」とも言えます。私は広報の重要な使命は「世の論調をセットする」ことだと思っています。自分の会社の商品がきっかけで世の中に何らかの現象が起こり、それをマスコミがニュースとして取り上げる。まさに世の論調がセットされつつある瞬間です。コメディアンがバナナの皮でずっこけて客席を一斉に笑わせるように、自分の仕掛けたアングルで世の中を動かせれば、それこそ広報パーソンの本懐ではないかと思います。