新型コロナウイルスとの共生を余儀なくされている「withコロナ時代」、オンライン発表会やウェビナーが当たり前となりつつあります。執筆者の遠藤眞代さんも、一念発起してウェビナーを開催することにしました。入念に準備を重ね、いざ本番。さてその顛末(てんまつ)は……。
どのウェビナーツールを使うべきか
ウェブセミナーを「ウェビナー」と略すのを知ったのは数カ月前。そしてつい先日、このコラムで鈴木正義さんが紹介された、参加者から絶賛されたという「モトローラのオンライン発表会」について、ウェブセミナーで解説してみたらどうか、という話が持ち上がりました。
いつかオンライン発表会を開催したいと思っていた私にとって渡りに船。「登壇者は鈴木正義さんだし、どうにかなるでしょう」と安請け合いをしてしまいました。そこで今回は“ずぶの素人”がウェビナーを運営して気づいたことを、広報目線で紹介させていただきます。
仮にIT系の発表会であれば、参加する記者もITやネットに対する知識が豊富ですから、どのようなウェビナーツールでも対応してもらえるかもしれません。しかし今回の参加者はIT系の記者ではありません。ですから、参加者が使い慣れている可能性が高く、 なおかつ私自身も普段から使用している「Zoom」を選択しました。
一方、広報視点で考えた場合、オンラインによるメディア向けの説明会や発表会のツール選びでは、何を重視すべきなのでしょうか。最低条件は普通のウェビナー同様、参加者側、配信者側共にトラブルが起こりづらいこと。その上で、参加者のウェビナーに対する理解やネット環境に配慮しつつ、こちらの見せたいこととの折り合いがつく配信方法を見つけることでしょう。
記者発表会あるあるですが、リハーサルでは問題のなかったデモが本番では動かない、なんてことがよくあります。リアルの発表会であれば、トラブルが生じても終了後に記者へ直接フォローできます。しかしオンラインでのトラブルは、マイナス印象を持たれたまま離脱されてしまう恐れがあります。そう思うだけで背筋が寒くなります。
ウェビナーとミーティング どちらを使うべきか?
ウェビナー初心者が知りたいのは、オンラインにおける「ミーティング用サービスとウェビナー用サービスの違い」ではないでしょうか。ミーティングは円卓で皆がワイワイ話し合っているイメージで、ウェビナーは演台の上からホストやパネリストが講演しているイメージ。オンラインで疑似的にそういう状況をつくってくれるサービスです。
大きな違いは参加者の権限の持ち方。例えばミーティングの場合は、ホストが権限を持っているものの、基本的に参加者全員が同列の権限(画面共有や発言など)を持ち、発信者になり得ます。
これに対してウェビナーの場合、ホストとパネリストが発信者で、参加者は受信者という立ち位置の違いが明確にあります。これに基づいて、ホストの意向で参加者(共同ホスト、パネリスト、参加者)の発言方法や認証方法、記録方法、連絡方法など、細かい部分までカスタマイズしていくイメージです。
記者発表会の場合、ミーティング機能を使うかそれともウェビナー機能を使うかと問われれば、イベントの性質上ウェビナー機能を選択することが多そうです。ホスト側からすると、発信側に徹して情報を提供するほうが運営しやすいのですが、記者発表会の場合は双方向のやり取りも記者が重視しているため、普通のウェビナーとは異なる観点で設定を検討する必要があります。また少し設定を変えるだけで、ホスト側だけでなく参加者やパネリスト側の使い勝手にも大きな影響が出てしまいます。ホスト側は設定を変えたら、必ず参加者側からの使い勝手や見え方を検証しましょう。
ウェビナー開催 6つの注意ポイント
今回ウェビナーを運営するに当たり、注意したポイントは以下の6つでした。
【1:参加者の登録と特定】運営方法、参加者の手間。
【2:参加者からの見え方】1つ操作するごとに、参加者からの見え方がどう変わるのか。
【3:質疑応答】挙手、音声、チャット、Q&Aどれを使うのか。各方法の組み合わせやタイミングをどうするか。
【4:コミュニケーション】ウェビナー開催の前後に参加者へのケアはできるのか。
【5:準備】1人でできるか。何を用意し、確認すべきなのか。
【6:運営】ウェビナー当日は登壇者以外の手を借りずに進行可能か。
Zoomに関する基本情報は、米国本国のオフィシャルサイト内にあるレクチャービデオを見れば全体像がつかめました。ただ、これだけでは参加者からの見え方や満足度をチェックできません。そこでテストのウェビナーを自分1人で20回ほど行い、さらに知人にお願いして複数人での検証も5回ほど実施しました。
1人で検証した際に用意したのは、PC2台とスマホとタブレットの端末計4台と、ぬいぐるみ2体(ホスト&パネリスト役)。メインPCをホスト役にして、残りの3台をパネリストや参加者に割り当てました。参加者側からの見え方を想像しながら進行の手順を何度も練り直しました。その流れを基に、ホスト、パネリスト、参加者の画面をキャプチャーして、登壇者用の進行台本を作成。さらにこれは当たり前かもしれませんが、案内の受け取りから登録作業、登録確認メール、リマインドメール、お礼メールの受け取りも“予行演習”を行い、かなり試行錯誤を繰り返しました。
そしてウェビナー当日。順調に進行したのですが、最後にやらかしました。
準備に余念がなかったにもかかわらず、スタート時には開いていた(らしい:参加者談)チャット機能が、何らかの操作ミスで閉じてしまいました。それに気づかず質疑応答タイムを迎えた途端、私の携帯に「チャット閉じているよ。書き込めないよ」というメッセージが次々届きました。
あれだけ参加者側の画面を気にしていたのに、なぜ当日、1人ヘルプを立てなかったのか……悔やんでも悔やみきれません。