ファッションにこだわりのある人の場合

 とはいえ、スポークスパーソン自身がファッションにこだわるタイプの人で、その人が自発的におしゃれをしてきてくれるなら、それを留め立てするものではありません。私の勤務先の前社長で、現在は自身で立ち上げたSUNDRED(東京・渋谷)において、新産業共創スタジオなる取り組みをしてご活躍の留目真伸さんはとてもおしゃれ。男性ファッション誌の取材依頼などが、何度も来るような方でした。その留目さんがよく言っていたのは、「ファッションはその人が属するコミュニティーを反映する」というものでした。

 「⾃分と同じような服を着ている人を好んで助けようとする」――。これは米国の社会心理学者であるロバート・B・チャルディーニ氏の名著『影響力の武器』に書いてあった言葉ですが、自分がコミュニケーションを取りたい人から親しまれる上で、ファッションは武器になり得るというわけです。事実、留目さんはビジネス誌の若い記者やスタートアップの経営者などから人気があり、それには若々しいファッションも一役買っていたのではないかと思います。

 しかしこれはかなりの高等テクニックで、本人がファッションにさしたる興味もないのに、服装についてあれやこれや周りが助言するのは避けたほうが無難です。そんなことに頭を使わせる前に、経営者、スポークスパーソンとしてやってもらうべきことがたくさんあります。この考えの妥当性は、特徴的な服装で知られるFacebookのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)が裏付けてくれます。ザッカーバーグ氏といえばワンパターンのグレーのTシャツ姿がトレードマークですが、彼はこう述べます。

 「できるだけ決断の数を少なくしたい。朝食に何を食べるかとか、どんな服を着るかとかいう小さい決断は、エネルギーを消費する」

 聴衆を引き付ける画期的な製品発表の際に着ていた服装を繰り返しすることで、またしてもセンセーショナルな発表があるのではないか、という期待感を自然とあおる効果もあります。これはアップル前CEOの故スティーブ・ジョブズ氏の、黒い丸首シャツとジーンズ姿が有名ですね。

 結局はスポークスパーソンの個性を広報がよく理解し、その人なりのやり方を一緒に考えていくことが重要なのだと思います。