マスコミのスクープは広報にとって肝を冷やす元です。そんな重大な記事が出るとはつゆ知らず、会社の“偉い人”からの連絡で知らされたときなどは、息が詰まりそうになります。とはいえ、おろおろしている場合ではありません。記事の内容を精査し、素早く手を打つ必要があります。

何だこれは。こんな記事が載るなんて聞いてなかった…… ※画像はイメージです(画像提供:Ljupco Smokovski/Shutterstock.com)
何だこれは。こんな記事が載るなんて聞いてなかった…… ※画像はイメージです(画像提供:Ljupco Smokovski/Shutterstock.com)

「オイ、今すぐテレビをつけろ」

 広報活動というと、プレスリリースの作成や記者会見の開催が目に付くかと思いますが、これらと同じか、時にはそれ以上に重要なのが広報用語で言う「一本釣り」です。要は1社に独占でスクープネタを出す代わりに、「大きく取り上げてください」というお願いとともに取材対応をする活動です。事前に教えてもらった掲載日の朝、わくわくしながらニュースをチェックするのはなんとも広報冥利に尽きる瞬間です。

 しかし、こんな穏やかな朝ばかりではありません。広報が把握していない「ガチなスクープ」でたたき起こされる朝もあるのです。

 「オイ、鈴木君。今すぐテレビをつけろ。ウチのニュースやってるぞ。どうなってんだこれ!!」――。まるでドラマのワンシーンのようですが、これは役員から私へ実際にかかってきた電話です。

 未発表のはずの経営方針、大型の業務提携ネタ。これらこそが経済部記者の狙う「本当のスクープ」と言えます。これらの情報は「今はニュースにされないこと」が会社の広報としての役目。一方の記者も、こうした場合は正面玄関(広報)からあまり取材をかけてきません。「マスコミが嗅ぎまわっている」と警戒されてしまうので、記者も広報の目に留まらないところで取材活動をしているようです。

 守る広報、攻めるマスコミ。しかしスポーツの世界でどんなに堅いディフェンスでも突破されてしまうことがあるように、いつの時代でもスクープは出ます。「夜討ち朝駆け」といって、記者が社長の自宅に詰めかけることもあります。そこでポロリと出た一言からスクープ、ということもあったようです。さすがに企業のコンプライアンスが徹底されてきた昨今、自社から都合の悪い情報が漏れることは少なくなっているようですが、そこを取材するのが記者の本領なので、どこかからネタをつかんでくるのです。

 広報としてこうした「予期せぬニュース」に対する次善策とは何でしょう。私の経験からすると、まずは「人より早く知っておく」ということに尽きます。

 新聞の場合、どのタイミングが最速かと言いますと、午前2時が最近の傾向です。これは伝統的に「14版」といわれる、それ以降は紙面修正をしない版が刷り上がる時刻ですから、他紙が追いかけても当日の朝刊に間に合わないのです。このタイミングでスクープが出てきます。その慣例なのでしょうか、電子版の朝刊更新のタイミングも午前2時になっています。

 午前2時、突然がばっと起きだし、不安げにスマホの「日経電子版」アプリを立ち上げている家族がいたら、その人は広報の担当者かもしれません。午前2時は特別な時間として、少なくとも社内の誰よりも早く記事を確認し準備しておくことが必要です。

 「オイ、何だよ今朝のこの記事」

 「はい、こちらでも確認しています。まずは関係者にこの後通達を出し、外部から問い合わせがあった際のQ&Aを展開します」

 「そうか、よろしく頼む」

 これに対し、チェックを怠るとこうなります。

 「オイ、何だよ今朝のこの記事」

 「え、あ? 何の記事ですか?」

 「貴様~新聞読んでないのか!」

 と、これだけの差が生まれるわけです。だから広報担当は早起きであらねばならないのです。

 こうして朝の第一報に対処した後も、まだまだ広報の仕事は続きます。まずは報道内容は事実であるのか、そうではないのか、その確認です。もし事実であり、かつ自社で発信する予定だった場合は、公式にその報道内容を認めるプレスリリースを用意し、配信することがあります。社内外の関係者から説明を求められた場合のQ&Aは必要でしょう。