マスコミに情報を売り込みたくても、どこから手を付けたらいいのか分からない方も多いでしょう。いきなりマスコミに押しかけても、話を聞いてもらうのは案外難しいもの。せっかく記者と会えても、セールスポイントをうまく伝えられない。今回はそんな方に役立つマーケティングの基礎知識を紹介します。
広報の情報整理に使える「SWOT分析」
マスコミに自社の商品やサービスを売り込む際に、ネタづくりのヒントとなる手法が「SWOT(スウォット)分析」です。SWOTとは、「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」という4つの要素の頭文字を意味します。ご存じの方も多いと思いますが、マーケティングの意思決定などに使われる有名なフレームワークです。シンプルでとっつきやすく、広報活動を展開する際の基本的な情報整理に大変便利です。
今回は広報の仕事の中からある事例を切り出して、客観的かつ正確に把握することを目的にSWOT分析を使ってみようと思います。最初はあまり大きく構えずに、1つの商品やサービスなど分かりやすい事柄に絞って練習するのがお勧めです。プレスリリースの作成を控えているなら、その発表内容をまとめるために使ってもいいでしょう。
早速ですが、やり方を簡単に説明します。SWOT分析とネットで検索すれば、2×2の4つの四角が並んだフォーマットが出てきます。そこには縦軸を内部環境と外部環境、横軸をプラス要因とマイナス要因とした4つの枠があります。そこに先ほどの4要素を当てはめると、以下のようになります。
広報的視点で言うと、内部環境は「ブランド」「技術」「マーケティング」「人材」「ロジスティックス」など、自社が持つ資産や資源、ノウハウなどをイメージしていただけるといいでしょう。これに沿って、左上にその商品やサービスの「強み」を、右上には「弱み」を書き込みます。あまり難しく考えずに埋めてみてください。弱みは案外思いつきにくいのですが、課題点という視点で埋めてみてください。ポイントはできるだけ具体的に書くということ。
同じく下段の外部環境は、「市場トレンド」「社会的動向」「競合他社動向」などをイメージするといいでしょう。分かりやすいところでは、オリンピック・パラリンピックなどのイベントは外部環境に当てはまります。新型コロナウイルスの感染拡大が収束した後の“アフターコロナ”も、ここに書いてもいいでしょう。
左下の「機会」は、SWOT分析をする対象がどういう状況に置かれるとビジネスチャンスになり得るかといった点をイメージしながら書きます。右下の「脅威」は外部環境でどういうことが起きると困るか、リスクが生じるか、といったような事柄を記入します。競合他社が自社より素晴らしい商品を発売する、というのも脅威になるでしょう。
外部環境は機会と脅威が表裏一体だったりするので、共通の項目も出てくるかもしれません。例えば為替や関税率といった外部環境の変化は、プラスにもマイナスにもなり得ます。その機会なり脅威が訪れたタイミングで、何が起こるか、何を実行するつもりなのか、についても書き出しておくと、完成度は上がるでしょう。
「弱み」や「脅威」があってこそ効果が生まれる
広報的視点で考えたSWOT分析とは、マスコミなどに売り込む情報を整理するための手法です。強みと機会については、担当者が常に考えていることなので、案外スムーズに書き込めると思いますが、弱みと脅威はてこずる方もいるでしょう。
改めてSWOT分析で客観的に整理・可視化してみると、弱みや脅威のピースがあってこそ、効果的にマスコミに情報を売り込むための“パズル”が完成することが分かります。自社製品の良い点ばかり並べても、客観性を重視する記者の心には、こちらが思っている以上に響かないものです。少なくとも弱みと脅威のピースは、Q&Aとして問い合わせがあった場合に必要ですから、すべて書き出しておくことは大変有益です。
弱みや脅威は、多くの記者が取材の後半に質問してくる“課題”とほぼイコールです。取材の際に質問されそうだと分かっているなら、あえて最初からトーキングポイントとして、「課題」に加え「課題解決」を示してしまう手もアリです。美辞麗句を並べるだけより、課題とそれに対する課題解決についても積極的に情報発信するほうが、最終的には読み手にとって有意義な記事に仕上げてもらえます。
SWOT分析を試したことがない方は、一度、頭の整理と思ってやってみてください。自分自身で分かっているつもりでも、意外と抜けている情報があることに気づくでしょう。うまくいけば、新しいアイデアを思いつくかもしれません。社外へのアウトプットだけでなく、社内ヒアリングでも各要素を埋めていく感覚で実行をすると、有益な情報が得られることでしょう。