初めて開催したオンライン発表会に思いがけず多くの反響があり、参加者の方々に絶賛されました。手探り状態でしたが、有能なスタッフに支えられ、見せ方を工夫したのが奏功したようです。いったい何をやったのか。今回はその裏側について説明しましょう。

新型コロナウイルスの影響で加速するオンライン化。記者発表会もオンラインが定着しつつあります ※画像はイメージです(画像提供:Sashkin/Shutterstock.com)
新型コロナウイルスの影響で加速するオンライン化。記者発表会もオンラインが定着しつつあります ※画像はイメージです(画像提供:Sashkin/Shutterstock.com)
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「ニュース番組を作る感覚」で構成

 現在、新型コロナウイルスの影響で多くの企業が記者会見をオンライン形式に切り替えていると思います。私が広報のサポートをしているモトローラ・モビリティ・ジャパンも、先日オンライン発表会を開催しました。手探り状態で実施しましたが、終わってからSNSを見ると、会見に参加してくださったマスコミ関係者から「素晴らしい」「今までのオンライン会見で最高」などのコメントをいただき、思いがけない評価に驚きました。

 ここでクリアにしておきたいのは、今回みなさんに絶賛していただいたのは会見の運営手法です。しかし、モトローラの製品もまた最高なので、その点はアピールさせていただきます(笑)。

 それはさておき、今回はこのモトローラの会見で何をやったのかについてお話しします。

 本題に入る前にまず触れておかなければならないのは、これからいかにも筆者の手柄であるかのような話をしますが、実際の功労者は“ヤマナカさん”という映像担当の人です。ただ、どこのどういうヤマナカさんかを教えてしまうと連れて行かれてしまいそうなので、これ以上の情報はお出しできません。それくらいヤマナカさんは素晴らしいのです。

 結果から言うと、モトローラのオンライン発表会は「ニュース番組を作る感覚」で構成したということです。オンライン会見というと、どうしても従来のステージ上で行われる「舞台演出」と「オンライン会議」の組み合わせと理解しがちですが、実はこれらとは全く違うフォーマットなのです。

 まず開催場所は会社の会議室です。その会議室にロゴパネルを立てて会場設営は終了。コストは0円です。

 会議室のテーブルに板付きになって司会(広報)とスポークスパーソン(製品マネジャー)がツーショットの絵を作ります。ニュース番組のキャスターの構図を思い浮かべてもらえればよいかと思います。この2人を狙うメインカメラが1台、デモ担当を狙うサブカメラが1台、さらにデモの手元を映すGo Proが1台、スマホの画面をPCに映し出すChromecastが1台、都合4台のカメラという構成です。

 オープニングは司会の挨拶から入り、そこから会見のお約束、会社幹部の挨拶です。モトローラの社長はオーストラリア在住で、このときは海外渡航禁止でしたので、ビデオメッセージとなりました。結果的にこれがかえってよかったのでしょう。そもそもオンラインなのでビデオでも違和感はありません。英語のスピーチは字幕を付けたことで、同時通訳よりも理解しやすくなったのではないかと思います。

 続いて製品担当によるプレゼンです。ここでは社長のビデオから一旦「スタジオに降りる」とテレビ業界でいう、MC席の映像を挟みます。これにより、これからプレゼンするのはこの人なんだな、という理解を持ってもらえます。

 ところがこの時間、最初にして最大のトラブルが発生しました。参加人数を読み誤ったのです。通常モトローラの発表会は70人も来ていただければ大盛況。この日用意したZoomアカウントのアクセス数の上限が100人なので、大丈夫だろうと高をくくっていました。ところがあっという間に100を超えてしまい、リアルタイムで視聴いただけない方を出してしまったのです。発表会の案内をお知らせした人数はこれまでと同じです。おそらく参加に移動を伴わないことと、気軽に退出できるといったオンラインならではのプラス面が働いたのだと思います。

 リアルタイムで視聴できなかった方には、会見の録画を終了後すぐに配信しましたので、なんとかご迷惑を最小に食い止められたかと思います。アクセス制限は大きなマージンを取っておくことをお勧めします。

Zoomの「ウェビナー機能」を活用

 そんなパニックになっている私を横に、プレゼンは進み、いよいよ別カメラを使ったデモのパートに突入します。これはテレビ業界的にいう「画がわりさせる」ことで、メリハリを付ける工夫です。もう一つ工夫したのは、デモを操作する「人」を映したことです。サブカメラの前でデモ操作をしてくれた“ヒルカワさん”というもう一人の功労者がいるのですが、その人が操作している手元(Go Pro)や画面(Chromecast)を分割して映します。こうすることで「今この人が操作している画面がこれなんだな」と見る側が付いてこられるというわけです。

 一通りプレゼンが終わると、最後は製品PRビデオで終了します。このPRビデオ、よく我々広報は発表会で流して「カッコいい!」とか舞い上がりますが、記者の方に聞くとさしたる情報量もなく、時間がもったいないから早くして、と思っている方も少なくないようです。しかしオンラインの場合、これも「画がわり」の役目を果たしていたように思います。

 ここまできてQ&Aです。説明していませんでしたが、オンラインイベントにはZoomのウェビナー機能を使いました。Zoomにした理由はいくつかありますが、Q&A機能が付いていることが最大の理由と言ってよいでしょう。

 質問はプレゼン中いつでも参加者が投稿できます。結果的に20件以上の質問をいただき、普段よりも活発なQ&Aができたと思います。また質問を受ける側からすると、例えば「資料の数字は間違っていないか」と「現在の景気状況をどう判断しているか」というような質問の性質を整理しながら回答の順番を決めることができます。

 ところがここでまたもトラブル発生。Q&Aの最中に切っても切っても私の携帯が鳴り続けます。発信者を見ると人事担当の役員からで、今までとは質の違う緊張が私を襲い始めることになります。本番中はいっそ電源オフがいいようです。

 他にもお昼ご飯の出前を頼んでいたのに本番が始まってしまい、生本番中にUber Eatsの人が会場に入ってくるのではないかという恐怖にずっとおびえていたなど、細かい反省点は多数ありました。

 今回、やはりオンライン発表会は「生放送のニュース番組」の感覚が近いのではないかということを強く思いました。もう一つは、オンラインのほうが広く参加者を集められ、質問も活発で、今後リアルな発表会が復活してもオンラインのオプションは継続してもよいかと今は思っています。

 発表会は録画して公開できますから、会社のYouTubeチャンネルにすべての発表会動画を公開することも一般化するかもしれません。そうなると会見も、一般のお客様に直接見られることを意識しなければならない時代になるかもしれません。

 何にせよ、今は新型コロナウイルスの流行が早く収束し、広報や取材活動が正常化することを願ってやみません。