信頼の高いメディアで記事にしてもらうために

 もう一つ、「提供した情報に責任を持つ」ということだけは、読み手に対して何をおいても担保してもらいたい部分です。ネット時代、この取材源の情報に責任を持つという点が実に悩ましいのです。フェイクニュースとまでいかなくとも、不正確な情報や書き手の主観で、事実と違う内容になっている記事があります。しばしば意図的に“あおった”記事を書く情報発信者もいます。その点、やはり報道や出版系のメディアのフィルターを通した記事の信頼度は抜きんでていると言えるでしょう。

 広報としていかに多くの記事を書いてもらうかは大事ですが、今やいかに信頼の高いメディアに記事を書いてもらうかが、プライオリティーになってきたと言えます。丸投げ企画が通りにくい編集部ほど信頼度が高い、そう考えると広報のアプローチとして「やり過ぎ提案」は、こちらの意図と(信頼できる)メディア側とのスタンスとがかみ合っていません。

 例えば「海の近くにある露天風呂」のような、情報を集めるだけでも骨の折れる作業があります。露天風呂といっても源泉かけ流しの檜(ひのき)風呂もあれば、まるでウナギの養殖池のような味気ない風呂もあり、どこに行けばいいのか見当がつきません。そうした場合、適当にネット情報をまとめただけのサイトよりも、旅行雑誌系のサイトで「年間100回以上温泉に行ったスタッフが選んだベスト10」を見つければ、やはりそちらを読んでみたいと思うわけです。やはり「誰からの情報なのか」はネット時代とても重要ですね。

 冒頭の編集氏が広報の売り込みにぼやいていたのは、こうした編集の存在意義をまるで認めていないかのような提案だったからです。誤解していただきたくないのは、提案のやり過ぎがいけない理由が、編集部のプライドを傷つけないように忖度(そんたく)しましょう、ということではありません。編集方針を尊重し、そのメディアの「目の付けどころ」で記事を書いてもらったほうが、我々広報としても最終的に得をするからです。

 では広報としては「提案型広報」は不要で、プレスリリースを淡々と投げ続けていればそれでよいのかというと、それもまた違うと思います。その媒体を理解することは大切ですが、分かった気になって編集部の領域に足を踏み入れるのではなく、やはり自社の市場や技術について一番専門的に分かっているのはメーカー(企業)サイドなので、その情報提供に徹するべきでしょう。

 新技術やトレンドをどう予測したか、さらには自社の伝統や製品哲学がどのようにその製品に反映されているのか、新製品誕生を取り巻く背景まで併せて伝えられるのは広報だけです。相手の編集方針を意識し、絶妙なトーンで情報を提供することが、広報の腕の見せどころなのです。