このところ新型コロナウイルス関連のプレスリリースが大量に配信されています。その内容や配信のタイミングから、各企業の広報対応の様子がうかがえます。今回、見事だと感じたのはワタミとGMOインターネットグループ。先手を打つ素早い対外発表は、他社も非常に参考になります。

新型コロナ関連のプレスリリースが大量に出回る中、広報の対応が問われています ※画像はイメージです(画像提供:docstockmedia/Shutterstock.com)
新型コロナ関連のプレスリリースが大量に出回る中、広報の対応が問われています ※画像はイメージです(画像提供:docstockmedia/Shutterstock.com)

見事だったワタミの情報発信

 私はフリーランスで企業広報の仕事も受けているので、プレスリリースのメール配信サービスからよくお知らせを受け取ります。2020年3月6日にはソーシャルワイヤーが運営する@Pressから「新型コロナの影響拡大、広報担当者がすべきことは?」、同3月11日にはPR TIMESから「新型コロナウイルスについての参考情報のご案内」というメールを、立て続けに受け取りました。

 PR TIMESは、新型コロナウイルス関連の情報を多く配信しています。「新型コロナ」をタイトルや本文に含むプレスリリースは、20年1月は13件、2月は118件でしたが、3月1~9日は200件を超えていました。3月27日のPR TIMESのプレスリリースランキングを見ると、月間トップ10の内、新型コロナ関連のプレスリリースはなんと8本。「新型コロナ」関連のリリース自体が増えていることもありますが、非常に多くの関心を集めていることがうかがえます。

 ただ関心の高さを反映してか、中にはいたずらに「新型コロナ」と入れるリリースも見受けられます。既に「新型コロナ」という文言を含むリリースがあふれているので、思ったほど大きな効果は得られないと思います。むしろこれだけシリアスな状況で、安直に「新型コロナ」という文言を使うのはリスクを伴うかもしれません。

 現時点では「新型コロナ」は世界中で最も強いワードなので、使いたくなります。しかし決してポジティブなワードではありません。ネガティブかつ強いワードは、両刃の剣です。このことを念頭に十分注意して使わないと、企業価値を落としかねません。

 とはいえ、風向きや潮目が変わるタイミングは、広報活動をしていく上で見逃せません。20年2月28日にワタミが発表した「臨時休校支援『ワタミの宅食』小中高生対象に商品無料でお弁当お届けを決定」はタイミングが絶妙で、話題にもなりました。ご存じの通り、全国の小中高の休校要請が出たのが同年2月27日ですから、その翌日ということになります。

 休校については私も発表になる少し前から戦々恐々としていました。そうした状況の中、ワタミは企業としてできることを検討し、万一に備えて事前に準備されていたのではないかと想像しています。もしかしたら、1日でリリースを仕上げたのかもしれませんね。

 いずれにしてもいち早く具体的な内容を提示し、既存の事業を世の中に還元する形でスピーディーに発表すると、多くの人々の好感につながることを再認識しました。発表のあった2月28日は金曜日。そして3月2日の月曜日午前9時から受け付けを開始、配達は翌週3月9日からスタート。広報発表と企業の動きがシンクロしていて、素晴らしいスケジュールだと感じました。

 この取り組みはコストに加え、社内で関わっている人間が多いだろうと思われます。広報担当者だけではなく、トップダウンで決めないと実行が難しい取り組みですので、広報活動の事が分かっているリーダーでないと、こうはいきません。

GMO、在宅勤務発表の素早さ

 その他話題になったのがGMOインターネットグループの在宅勤務に関する発表で、20年1月26日でした。どれほどスピーディーなのかを可視化したいと思い、厚生労働省検疫所の情報サイト「FORTH」のリリースを抜粋して、2020年1月のコロナウイルス関連の経緯を大まかに整理してみました。

・1月6日発表:「原因不明の肺炎―中国」
 19年12月31日に中国湖北省武漢市で検出された病因不明の肺炎(原因不明)の事例についてWHO中国事務所に通知された。原因物質はまだ特定または確認されていない。

・1月14日発表:「中国の武漢における肺炎の集団発生に関するWHO声明」
 中国当局は、武漢において肺炎で入院している患者で同定されたものは、新しいコロナウイルスであると予備的に決定。

・1月27日発表:「新型コロナウイルスによる注意喚起(更新)1月24日付け-海外安全情報」
 新型コロナウイルスの感染症例が複数の国・地域から報告されている。湖北省に対して感染症危険情報レベル3「渡航は止めてください(渡航中止勧告)」を、中国のその他の地域に対して感染症危険情報レベル1「十分注意してください」を発出。WHOは、緊急事態宣言をするのは時期尚早と発表。

・1月31日発表:「新型コロナウイルスによる注意喚起 1月31日付け-海外安全情報」
 1月31日、世界保健機関(WHO)は、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、中国に対して、現在の感染症の流行を封じ込めるための公衆衛生上の対策を実施し、中国全土の症例の把握や調査を強化することなどを求めた。日本は1月21日に中国全土を感染症危険情報レベル1(注意喚起)に、また1月24日に湖北省をレベル3(渡航中止勧告)に引き上げた。

 GMOの発表は1月26日ですから、1月31日の緊急事態宣言の5日前ということになります。いかに同社の対応が素早かったかがうかがえるでしょう。ちなみにダイヤモンドプリンセス号が横浜港に到着したのは2月3日です。

 リリースも“やります的”な抽象的な内容ではなく、5W1H(when、where、who、what、why、how)を具体的に示しています。単純に今回の新型コロナウイルス対策を並べるだけでなく、GMOが東日本大震災以降培ってきた、緊急時の対応を実行した結果である旨を示すなど、企業姿勢を伝えることも忘れてはいません。さらに「新型コロナウイルスに関する取り組みと関連リンク集」という特設ページを設け、これらを短時間でまとめ、発信する。広報として見習うべき仕事だと思います。

 まだ収束しそうにない新型コロナウイルス感染症ですが、アンテナを張りながら状況を判断し、企業としてできることをスピーディーに行う。そして迅速に世の中に発信していく。その重要性を感じずにはいられません。