社長や経営幹部がうっかりマスコミに余計なことをしゃべってしまわないよう、彼らに「メディアトレーニング」を行う企業が増えてきました。マスコミに対する完璧な応対は訓練のたまものですが、取材する記者からすると味気ないことも。あえて「野に放ち」、自分の言葉で話してもらうことも大切です。

訓練はバッチリ。何でも聞いてください、完璧にお答えしますよ ※画像はイメージです(画像提供:Phonlamai Photo/Shutterstock.com)
訓練はバッチリ。何でも聞いてください、完璧にお答えしますよ ※画像はイメージです(画像提供:Phonlamai Photo/Shutterstock.com)

メディアトレーニング、やり過ぎてませんか?

 近年「メディアトレーニング」という言葉を耳にするようになってきたように思います。簡単に言うと、社長などマスコミに対応する経営幹部に対し、厳しい質問への対処方法や自社の強みを端的に説明する意識づけ、さらには話法、ジェスチャーや視線、服装に至るまで、「良いスポークスパーソン」になってもらうための訓練のことです。最近は国内でも採用する企業が増えているようですが、特に外資系企業の広報では「メディアトレーニングを受けていないなら取材対応はさせられない」くらい厳格なものです。

 いいことずくめと思われるメディアトレーニング。しかし、今回は結構“これ”をやってしまっている企業が多いのではないかと思う「メディアトレーニングのやり過ぎ」についてです。

 確かに記者との会話が脱線してしまい、肝心のことを言えなかったり、悪意のあるような質問に言質をとられたりしないように準備することは必要です。ただ、あまりに準備し過ぎてロボットのようなスポークスパーソンに仕立ててしまうと、判で押したようなやり取りだけになってしまいかねません。記者側からすると、取材のやり取りでその会社の面白さを発見したり、その人物の魅力を感じたりすることができなくなってしまいます。

 グローバル企業の経営者を取材した経験のあるマスコミ関係者ならお分かりいただけるかと思いますが、大体何を聞いても事前に調べておいた情報以上のものは出てきません。

 「わが社はSDGs(持続可能な開発目標)にコミットした、世界で最も先進的な企業だ」――例えばこんなホームページを朗読するようなメッセージでも、5大紙といわれるメジャーな新聞で「記事にしてもらえ」というご下命が本社の広報から日本法人に降ってくることがあります。もし本当に記事にしてもらいたければ、直近では自分自身がこんな体験をした、この先こんなことをやってゆくというようなアップデートなりアナウンスなりが欲しいところです。しかし特にそれもなく、どういうアングルから聞いても同じ回答。記者としては「う~ん、だったらホームページ見て記事書くよ……」とボヤきたくなります。

 とはいえ、同じ内容でも世界的企業の経営者の口から直接コメントをもらえたということには一定の価値があります。従って日本法人の広報が取材アレンジに当たって心得ておくべきは、そのよく訓練された本社の幹部から何か目新しい発言があることなど期待せず、たとえありきたりの発言であっても、取材者にとってそれを引用するに足る人物かどうかということです。それによって取材していただくメディアが全国紙なのか、業界の専門媒体なのかも違ってきます。