便利なプレスリリース配信サービスですが、毎日大量に届くだけに記者や編集者はいとも簡単にスルーしてしまいます。しかし一瞬でも彼らの目に留まれば広報としてはひとまず成功。かすかな記憶が記事化につながることも。それにはメールのタイトルへの工夫が重要。どうすればいいのでしょうか。

大量に届くプレスリリースメール。開こうか、それともゴミ箱へ直行か…… ※写真はイメージです(写真:oatawa/Shutterstock.com)
大量に届くプレスリリースメール。開こうか、それともゴミ箱へ直行か…… ※写真はイメージです(写真:oatawa/Shutterstock.com)

プレスリリース配信サービスの是非

 プレスリリースを送っても、せいぜい10通しか読まれないと聞いて「プレスリリースをメールで送るのは無駄ではないか」と言われてしまいそうです。届いたリリースを全部読む方もいますが、「タイトル」「発信者」「リード文」だけを読んでいる方が実際には多い(関連記事「マスコミ相手のメール配信は『78文字』で勝負が決まる」)。もちろん何とか記事として取り上げてもらいたい案件では、メールだけでなく記者や編集者への個別対応が必須です。

 プレスリリースのメール1本だけでは採用される確率が低いと分かっていながら、並行してメールを送り続けされているのにはわけがあります。

 例えばプレスリリース配信サービスのPR TIMESを使った場合、リリースは数十媒体に“転載”されます(私自身はこれを「記事」とは呼びませんが)。たった数万円でネット上に履歴は残りますし、SEO(検索エンジン対策)的にもある程度効果のあるよくできたサービスです。たとえ記事にならなかったとしても、広報業務として何となく結果は出せた気持ちになれます。

 私が面識のあるメディア関係者(新聞、ウェブ、雑誌などで活躍されている合計109人の方々)に対して独自に実施したアンケートでは、「一斉配信サービスは即ゴミ箱行きにしているので、ぜひお使いにならないようお願いします(^^;;」という意見もありました。ただ本音を言えば、背に腹は代えられない思いもあったりします。たとえ配信サービスを使ったとしても、プレスリリースを送っておけばニュースバリューが伝わり、取材や露出につながるケースもありますから。

お願い、一瞬でいいから

 記事を書いてほしいメディアがプレスリリースのメールを開かず、記事化に至らなかったとしても……という場合の話も書いておきます。

 短期的に見ると記事にならなかったプレスリリースは無駄骨のように思えます。しかしコンマ1秒でもリリースのタイトルがメディア側の目に触れ、企業の進捗を伝えられるとすれば、目的の1つは達成しています。

 記者や編集者の全員が速報記事を書くわけではないので、頭の片隅に「そういえば、前も同じ企業に関するメールが来ていたな」と爪痕を残すことも、プレスリリースメールの大きな役割です。気が遠くなるような話と思われるかもしれませんが、ほんの一瞬のJFYI(Just For Your Information)でもサブリミナル効果(無意識への働きかけ)は期待できます。実際、「えっ、なぜ今ごろ?」と驚くようなタイミングで取材依頼をもらうこともあります。継続は力なりです。

 ちなみに価値が低いと感じさせる情報を送り続けると……。

 「明らかに媒体カラーに合わないものは送らなくてもいい。とりあえず送信してます的な情報が多いと、その会社からのメールは迷惑メールフォルダー行きになる」

のようなことを言われてしまいますからご注意ください。一度フィルタリングされたら終わりです。私のメールはフィルタリングされているんだろうか、と想像するだけで寒気を覚えます。迷惑フォルダーやゴミ箱は広報の鬼門。何でもかんでも送りつけることだけは気をつけないといけません。

タイトルに入れておくべき要素

 一瞬でもプレスリリースの存在をメディア側の意識に刷り込めれば、いつか記事化につながることもある。そうなると大切なのはやはりメールの「タイトル」です。私の使っているスマホの場合、受信トレイ表示の際に読めるタイトルの文字数は20文字ですが、アンケートでは「タイトルですべて決まるので15文字の宇宙で最高の表現をしてください。開くかどうかのすべてがかかっています」というコメントをいただきました。

 えー、15文字って少ない!!

 独自アンケートの結果では、97.2%の方がメールの目的(発表、発表会、ご参考、人事、イベントなど)は必ず入れておいたほうが良いとのこと。記者さんから「発表会の案内」と気づかず行きそびれた、という話をよく聞きます。ウソのような話ですが、タイトルに【発表会】と入っていなかったという初歩的なミスが原因だったりします。

 しかし思い切りが良すぎてもダメ。「件名が『プレスリリース送付のご案内』(中身が全く分からない上に他社メールとかぶる)だけのメールがなくなることを願っています」との声もいただきました。

 次にタイトルに入れておくべき内容として多かったのは企業名で、知っている会社で70.1%、聞いたことのない企業だとしても42.1%の方が知りたいと思っているそうです。工夫して送信者名に企業名を含めれば、タイトルに入れ込む文字を有効に使えるでしょう。ここでも思い切りが良すぎるのはNG。「タイトルに企業名だけってのはやめてほしい。開いて関係なかったときは時間の無駄感が大きい」とのこと。

 「最近、バズワードを活用した、それ自体がウェブのニュース記事なのかと思うようなタイトルのリリースがありますが、そのまま載せることはないし、本質を見失いそうになるので、極力主観を省いたシンプルで事実のみを伝えるリリースであってほしい」という意見もいただきました。やはり7割以上が「主観的な表現のタイトルにすべきではない」と考えているようです。他にもこのようなご意見が。

 「リリースは何より正確な情報に限る。無駄なあおり文句は不要」

 「押しつけ表現は見かけ倒しのケースが大半なので、スルーする確率が逆に上がってしまうかもです」

 オッと、⽬に留まる⾯⽩いタイトルをつけたリリースも戦略の1つですが、基本はメディアが掲載の可否を判断するのに必要な情報を丁寧に⼊れ込むことです。発表直前は忙しくてそれどころではありませんが、ぜひ⼼がけたいものです。

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『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』

『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』
2022年12月19日発行
 連載「風雲! 広報の日常と非日常」が本になりました。これまで3年半以上に及ぶ、約150本のコラムの中から、「マスコミ対策」に焦点を絞って再編集。企業や個人までも手軽に情報発信できるSNSがもてはやされる今日ですが、“バズった”記事の出どころをたどると、マスコミの記事や番組であることが少なくありません。だからこそ、企業は「情報の源流」でもあるメディアへの対策を十分に練り、正しい情報を伝え、記事や番組として発信してもらう重要性がこれまで以上に高まっていると言えます。本書は連載でおなじみの現役広報パーソンである二人の著者(鈴木正義氏、遠藤眞代氏)が、20年以上にわたる記者や編集者との生々しい駆け引き、社内でのあつれき、成功談・失敗談から導き出された「記事や番組に採用されるためのテクニック」「メディアとの関係構築法」「危機感管理術」などを、当時の現場の様子や本音を交えながらリアルに書きつづっています。読み物としても楽しめる中身の濃い1冊に仕上がっています。

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第2章 取材対応こそ危機管理の要
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