社長インタビューなどメディアの取材に立ち会う場合、広報は必ずメモを取ります。もちろん取材する側の記者やライターも、記事を書くためにメモを取ります。この“メモる”行為、「何を書いているのか?」とお互い気になりませんか。そして広報が取った記録用のメモ、どのように使われるのでしょうか。

何、メモってるんですか? ※写真はイメージです(写真:baranq/Shutterstock.com)
何、メモってるんですか? ※写真はイメージです(写真:baranq/Shutterstock.com)

取材時の録音が容認されてきた昨今

 広報の仕事に「インタビューの立ち会い」があります。立ち会いといっても、横に座ってニコニコ笑っていればよいわけではありません。記者が会話をどう持っていこうとしているのか、自社のスポークスマンが言いたい方向に向かっているのか、そのあたりを気にしながら微妙な軌道修正を入れたり、しかし余計な口出しは極力しないようにしたりと、広報スキルの全てが求められる時間と言ってもいいかもしれません。

 その昔、インタビューに初めて立ち会った若い広報が、パソコンの画面を開いて何やらキーボードをいじっていました。メモを取っているのかと画面をのぞいてみたら、仕事と関係ないネットサーフィンをしていて、その場で「真空飛び膝蹴り(※日本を代表するキックボクサー・沢村忠氏の必殺技)」を出しそうになったのをグッとこらえたことを覚えています。

 まあこの人は例外中の例外として、広報としては取材のやり取りを“メモる”ことがお決まりの仕事となっています。

 現在は取材する側もされる側もボイスレコーダーを使うことにあまり抵抗がなくなりましたが、少し前までは記者の方も「録音させていただいていいでしょうか」と断りを入れるのが礼儀でした。とある企業では「広報が録音するのは証拠を取っているようで失礼」ということで録音禁止、とにかく広報は必死で速記を取らねばならないというルールもありました。もし言い間違いや聞き逃しがあった場合を考え、双方録音しておくのは、昨今慣例として容認されてきていると思います。

 私も録音しますが、後で聞き返すときにどういうやり取りがどのくらいの時間帯にあったのかが思い出しにくいので、主要なやり取りだけはメモを残すようにしています。大体は手書きですが、パソコンでミスタイプなどを気にせずガガガっと打っておくだけのときもあります。

メモを取らずに相手のガードを下げさせる

 このメモについて、取材する側、される側で面白い話があります。とあるPR会社の人と話をしたとき、記者によってはペンを動かすと、いかにもその部分を記事に書くよという雰囲気になり、話し手も警戒するのだそうです。そこで「重要な話を引き出すぞ!」というときは、話し手が警戒しすぎないようあえてメモを取らず、「ほほー、そうなんですかー」と軽く聞いている素振りをすることがあるそうです。しかし、しっかり言質を取っているのだとか……。

 そんな取材テクニックがあるのかと感心していたら、ある時、何回かインタビューをしていただいた新聞記者の人から、「鈴木さんのペンの動きがあるときは、スポークスマンが何か私の気が付いていない重要な発言をしているのではないかと思ってドキドキしてしまう」と言われたことがあります。確かに重要な部分はメモを取るので、広報のそんな動きにまで目を光らせている記者がいるのですね。これにはちょっと驚きました。

 もしかすると、私が真空飛び膝蹴り未遂に終わった若手広報君はそれを計算に入れ、陽動作戦としてオークションサイトに入札額をインプットしていたのかもしれません。いや、それはないでしょう。