やっぱり、カメラは急に止まらない

 テレビ取材は記者、カメラ、技術の3人が最小チームで、高額な撮影機材を含めかなりのリソースが動くことになります。要するに無駄な取材をしている余裕はありません。実際に現場へ行ってから何が撮影できるかが分かるのでは、あまりにリスクが大きすぎます。そのため取材前からかなりしっかり「どういうニュースにするか」「そのためにこういう撮影をし、こういうコメントを撮ってこい」というプランをガッチリ固めてきます。ここがテキストと写真の記者と大きく違う点です。

 取材プランを立てるため、広報にテレビの記者は事前に根掘り葉掘り聞いてきます。なにが発表されるのか、誰が登壇するのか、どういう「いい絵」が撮れるのか。このとき相手の番組の立場も考えて提案できる広報の「トーク力」が問われます。ここがある意味、テレビ取材に対する勝負どころといえます。できれば「パソコンを持った社員をラグビー選手にタックルさせましょうか?」というようなテレビで使えそうな映像を提案して、一緒に相手の「絵作り」まで参加できると、かなりこちらの想定した内容のニュースに仕上げることができます。

 怖いのはほとんど何の問い合わせもなく、ブラッと会見にテレビがやって来たときです。実際にはブラッときていることはなく、前述のとおり何らかのニュースのストーリーを決めて、ニュースの担当キャップや番組と握っているので、この段階から新製品の特徴の説明を初めても撮影内容はもう変えられません。

 例えば新製品はデザインの良さをアピールしたかったとします。しかしテレビ番組としては、最近は若者がパソコン離れをしているので、それに対してメーカーが何らかの対策を打ち出してくる、あるいは打ち出してこなかった、というのがニュースの狙いだったとします。

記者:「社長、今回の製品の特徴は?」

社長:「デザインです」

記者:「……やはり若者をターゲットにしているということでしょうか」

社長:「いえ、すべての年齢層が対象です」

記者:「そうは言っても若者でしょう」

社長:なんだかしつこいな!)「いえ違います」

記者:なんでこっちの狙い通りのこと言わないんだろこの人、よーし)「では、若者のパソコン離れにはご関心がないということですか」

社長:オイ広報、なんでこんな質問になったんだ?)「いえ、えーとですね……」

 テレビニュースというのは対象が一般の幅広い層ということもあり、内容を平易にまとめること、普遍性のある社会的課題に話題を広げることなどが求められます。ストレートに自社の新製品を礼賛するような内容のニュースなどまずありませんから、相手の狙いもくみ取って、その中でどう自社のアピールを入れるかという着地点を提案する、くらいに考えたほうがよさそうです。

 「カメラは急に止まらない」のです。