海外ルール優先では“KPI警察”の摘発から逃れられない

 ところがです。広報に限らず外資の何が悲哀かというと、「日本の常識の中にあって海外のルールで働かざるを得ない」ということです。なかなかいいことを言いました。手応えを感じたのでもう1回書きます。

 「日本の常識の中にあって海外のルールで働かざるを得ない」のです。

 広報の業務においてこれを具体的に説明すると、前述の日本と海外の記事の違いを考慮せずに、「ポジティブ記事の割合が70%以上」というようなKPIを全世界の広報チームが一律に課されるということです。

 結果、日本の記事はほとんどが「ニュートラル=KPI未達」と断ぜられ、「日本の広報、何やってんの?」という“KPI警察”の摘発を受けることになってしまいます。

 私は外資系での経験が都合20年以上になるのですが、広報に限らず外資系企業では、日本法人の組織に対して何らかの不信感を抱かれてしまうと大変です。ただでさえ時差があり、言語の違いもあるコミュニケーションの帯域が非常に狭い海外本社とのやり取り、軌道修正には相当な工数を要します。このコミュニケーションの薄さを補うのが数字、つまりKPIなので、ここを確実に握れていないと連日不毛なリポートや説明のための電話会議に追われ、もう本業どころではなくなります。

 で、冒頭のモトローラ社長のコメントになります。日本の事業責任者が日本でのメディアの特性はこうこうで、KPIも同じに考えてもらっては困るよ、という話を海外の担当者に伝えて広報を守ってくれたというわけです。ここまでトップが広報を守ってくれれば、我々広報もそれに応えて日本法人の業績アップに向け全力投球しよう、という気持ちになるものです。

 とはいうものの、機動戦士ガンダムに登場する有名なセリフ「偉い人には、それが分からんのですよ」という会社がまだまだ多いのではないかと思います。地域や背景の違いを認めるダイバーシティー(多様性)の時代、広報の世界にももう少し進化があってもいいと思います。

(写真:Iakov Filimonov/Shutterstock.com)