外資系企業は日本法人であっても海外本社のルールが適用されるのが一般的。それが広報にとっては非常にやっかいなのです。日本と外国の記者とでは、記事のテーストが異なります。そうしたメディアにおける“文化的な違い”によって、本社から「何やってんの?」と低く評価されることがあるのです。

「日本の広報、何やってんの?」 ※写真はイメージです(写真:Iakov Filimonov/Shutterstock.com)
「日本の広報、何やってんの?」 ※写真はイメージです(写真:Iakov Filimonov/Shutterstock.com)

読者評価の高い「ティアワン」記者の存在

 「日本のメディアは何を言ってもフンフンとうなずいているだけで、あまりリアクションしない。記事も特にほめるわけでもけなすわけでもなく、淡々と事実を書く。しかし、これが日本ではポジティブな記事なんだ」

 これは私が広報サポートをしている関連会社のモトローラジャパンの社長が、海外から来たマーケティング担当者にアドバイスとして語った言葉です。私はもうこの“とんこつラーメン好きのオーストラリア人”を抱きしめてしまいたいくらい感激しました。

 私がこの発言の何に感激したかを話す前に、日本と海外の記事の特性の違い、そして外資系企業広報のKPI(重要業績評価指標)管理について理解していただく必要があります。今回はその視点で、外資系企業の広報の“悲哀”を明かしましょう。

 外資系企業の広報は、掲載された記事を「ポジティブ、ニュートラル、ネガティブ」に分類するセンチメント評価を行います。特に近年はソーシャルメディアでの「共感」を意識しなければならず、共感の起点となる記事のトーンがポジティブであるかどうかの評価に強くこだわります。

 海外の記者は新製品の紹介であっても結構主観を盛り込み、良い悪いの振れ幅が大きい評価記事を書きます。有名なのは元ウォール・ストリート・ジャーナル紙のウォルト・モスバーグ記者です。同氏は「これはいい」「ここが悪い」とズバズバ指摘してくる記者で、だからこそ信頼できるとして読者から高い評価を受けています。外資系企業の広報ではこうしたモスバーグ氏のような記者をKOL(Key Opinion Leader)と呼んで、企業によっては「ティアワン(最優先)」として特別な取材機会を設定したりするようです。

日本の記者は「ニュートラル」が一番

 一方、日本の記者やライターの方に聞くと、正反対のことを心がけているようです。

 主観を排し、書き手の感覚ではなく事実と客観性を重視する――。その物に対し感動したり興奮したりするのはいわば読者に委ねられるべきことで、バイアスをかけずに書くことがプロという考え方です。よって我々広報としても記者とは公平、フラットなお付き合いが結果として安定した良い記事の獲得につながります。

 フラットなお付き合いとして私が心がけていることがあります。会見の質疑応答において、質問のために挙手した記者を司会として当てるとき、たとえ顔見知りの記者さんであったとしても「では前列の眼鏡の方」というように知らないふりをすることです。

 実はアップル時代、毎回会見で最前列に陣取って熱心に取材してくださる常連の「アップル番」記者団がいました。「では次は、〇〇さん」「あ、では次××さん」という調子で質疑応答を進めていましたところ、あるとき「懇意にしている人ばっかり指しているみたいで、排他的な感じがしてよくないよ、あれ」という指摘をベテランの記者の方からいただきました。それ以来、たとえ前日一緒にお酒を飲んだばかりの相手であっても、初めて会ったかのように「では前列のチェックのシャツの方」とさらりと当てるようにしています。

 もっとも、あまりに親しい方ばかリ続くとだんだん飽きてくるといいますか、何かイタズラをしたくなってきます。そこで「では、後ろにいる体格の良いイガグリ頭の方」「金髪に白いジャケットの方」など、もうこの段階でPC業界関係者には誰のことなのか特定できそうな特徴で時々お呼びすることもあります。

 まあ私のひそかな趣味の話は置いておいて、書き手のマスコミも情報の送り手である広報も、ニュートラルというのが日本の特性といっていいかと思います。