ある編集者との気まずい出来事

 大企業ならリリースを出せば簡単に記事になると思っていたら大間違い。意外とそうではありません。公平性を保つため短期間に同じ企業の記事(商品紹介など)ばかり書くわけにはいかない。そんな理由で選別されることも頻繁にあります。特にリリースが多い企業の場合、媒体によっては次の記事化まで一定の“空白期間”が必要なようです。

 広報パーソンとしては、担当している商品やサービスが取り上げてもらえるかどうかは社内競争です(こんなことを考えていたのは私だけかもしれませんが……)。例えば同じ企業が1週間に数件の発表を行ったとします。地味な商品の場合、急ぎの記事でもないので寝かされることもしばしば。もちろん記事にならないこともしょっちゅうです。多くの発表案件があり、なおかつ地味案件を記事化してもらうには、記者との関係性(質問がしやすい)や熱量(情報量が多い)がカギといえるでしょう。大企業の場合は社内競争になりますが、小さな規模の会社であれば他社との競争です。

 偉そうなことを言っても、私が全ての人に顔や名前を覚えていただいているわけではありません。数年前にこんなこともありました。ある地下鉄のホームでの出来事です。私はSNSでよくお見かけしていて、面識もある編集者の方にバッタリお会いしました。

 私:「遠藤です~。お久しぶりですぅ!」

 相手は困った顔をして、キョロキョロする。

 私:「以前、○○のときにごあいさつさせていただいたのですが」

 編集者:「あ、あ、えっと、お会いしたことありましたっけ。ごめんなさい……」

 気まずい沈黙が流れる。

 私:「あ、で、では失礼します……」

 考えてみたらごあいさつしたのは10年以上も前でした。こちらは普段からSNSでお見かけして親しみがあったので、向こうも自分のことを認識している気になっていたのです。本当に申し訳ないことをしてしまいました。一方的な思い込みでなれなれしくするのは、危険ですのでご注意ください。

記事を作る同志として見てもらえるように

 顔と名前を覚えていただいた次のステップは、指名を取ることです。世の中には指名制度を導入している業種がたくさんあります。私が利用しているのは美容院くらいですが、ネイルサロンや飲食業でもお気に入りのスタッフを指名してサービスを受けられるお店が存在します。広報は記者からいくら指名されても指名料など入りませんが、「ご指名」をいただけるようになると広報の仕事はがぜん面白くなります。

 「〇〇特集をしようと思っているけど、何かいいネタない?」とか、「このテーマで適当な人を知らない?」とか聞かれるようになります。広報という枠を超えて、記事を作る同志として見てもらえるように思える瞬間です(勝手にそう思っています)。広報冥利に尽きるとはこのことでしょう。当然、担当商品の売り込みのハードルも下がります。

 覚えていただき、指名してもらえるようになるまでには、凹むこともよくあります。しかしめげずにやることで、的確な広報コミュニケーションができるようになるのです。