メディアに対する新製品や新サービスの売り込みは広報にとって大切な日常業務。記事に取り上げてもらおうと力が入り、ついこちらの都合を優先した「モノ」目線で説明しがちです。これでは先方に響かないこともあり得ます。相手側の目線で、彼らの課題解決につながる「コト」を柱に話すことが大切です。

ほら、一瞬で汚れが落ちますよ――。実演販売のように、広報はメディア側の心をつかめるよう、トーク力を磨きたいものです (イラスト:freehand/PIXTA)
ほら、一瞬で汚れが落ちますよ――。実演販売のように、広報はメディア側の心をつかめるよう、トーク力を磨きたいものです (イラスト:freehand/PIXTA)

課題解決につながる消費者視点の「コト」トーク

 「このお話をしてニヤリと笑うのは、そう、ご担当者さま!!」

 ある展示会の会場で、普段はあまり聞かない軽快な口調で話している男性がいて、つい足を止めてしまいました。彼がプレゼンしていたのは、私には関係のない人事ソフト。お目当ての会社ではありませんでしたが、聞いているうちに紙芝居か一人芝居を見ているような感覚になり、結局、最後まで聞いてしまいました。身ぶり・手ぶり、声の抑揚、話の展開もプロフェッショナルそのもの。感激したので、ブース内の社員らしき人に尋ねてみたら、普段は「実演販売」をされている方とのこと。どうりで……。大変難しい商材なのに、巧みな話術で最後まで聞かせるテクニックは、本当にすごいと感動しました。

 担当している商品やサービスを説明するため、短期間で複数の媒体に伺うことがあります。正直1回目はちょっと失敗をしてしまいがちです。商品やサービスを作った側の視点に立ちすぎて、説明を並べ立ててしまいたくなるからです。会社側が言いたいことの優先順位を決めていると、トークはそこに引っ張られて、その順番通りに話をしたくなります。そうした積み上げ式の説明は、並みのトーク力だと相手を退屈にしてしまうだけです。私は自分トークで記者の魂を一瞬で抜き取り、さらに眠気まで起こさせた事が何度もあります。

 特に技術やサービスといった、手元に現物がないものは説明するのが難しい。説明をしていても、相手の方の頭の中に“?”が出ているのがこちらからも見えたりして……。そんなときは、恥ずかしくて逃げ出したくなります。

 例えば今でこそ「Bluetooth」が何かは多くの方が知っていますが、登場したばかりの頃は理解してもらうのが大変でした。

 「これはBluetoothを使ったヘッドホンで、1回の充電で4時間使えるので通勤通学の往復で便利に使っていただきたい商品です」と説明すると、「え、Bluetoothって何ですか」「4時間って充電式なのですか」と質問が出る。「近距離無線通信規格の一つなのですけど……」とか「充電池を内蔵していて……」といった具合に先に話が進まない。

 だからといって相手の知識欲を刺激し、最初にBluetoothや電池の技術で記者の頭の中をいっぱいにしてしまっては、製品を売り込みたい広報トークとして大成功とはいえません。こうなると紹介したヘッドホンではなく、Bluetoothや電池について記事を書きたくなってしまうかもしれません(それもありがたいのですが……)。

 失敗は二度としたくない。そこで次は“つかみ”が欲しいと、「コト」を切り口にしたトークに変更します。

 「このヘッドホンは無線なので、通勤通学カバンの中でケーブルがグチャグチャになることもありません」

 難しい言葉は使わず、お客様の課題解決につながる体験(コト)をイメージできる説明を最初にします。そこで興味があるように見えたら、次に進みます。

 「実はこの商品には『Bluetooth』という近距離無線通信規格の一つを使っていて……」と。これでやっと「モノ」トークを進めることができます。ホッとする瞬間です。

 興味がなさそうな方の場合は、1回休みましょう。

 「ところでヘッドホンって、普段使われていたりしますか。音楽はお好きですか」

 別のコトトークを続けて、突破口を探しながら前に進めていきます。