知ったかぶりをしないこと

 プレスリリースなどを書く前には、技術者やその道のプロに事前ヒアリングします。相手の仕事の専門性が高いほど、話に多くの専門用語が登場します。当時負けず嫌いだった私は、「知らない」「分からない」が言えずに分かったふりをして、「なるほど」「フムフム」みたいな相づちをしてしまうことが頻繁にありました。なんとなくしか理解していないので、自席に戻ってプレスリリースを書こうとしても、筆が進むわけがありません。そもそも理解していると勘違いした私は、頭がおかしくなりそうになりながら、オフィスをぐるぐる歩き回ったり人に話しかけたりして、プレスリリースを書いていました。

 筆が進まないことを嘆いていると、新聞記者出身の広報マンでソニー時代の同僚だったTTさんに「エンドウ、またウニ(頭の中がぐちゃぐちゃ)ってるのか~」と、言われたものです(関連記事「辛辣な言葉で傷だらけ だから広報は『多少厚かましい人』がいい」)。

 ニヤニヤしながら「どれどれ、何を発表するんだ?」と、おもむろに質疑が始まります。リリースがまとめられないくらいですから、案の定答えられずボロボロになって終了。すると理解していなかった箇所が判明するので、再度担当者に会いに行ったり、電話をしたりして理解を深める。当初はそんなことを繰り返しながら、憑依の準備をしたものです。さすがに数をこなすと「ウニる」時間がもったいないので、1回のヒアリングでリリースの初稿は書けるようになりました。

 1回のヒアリングで終わらせる質問のコツは、「知ったかぶりをしないこと」。具体的には以下の2つです。

・1%でも不安が残ると思った内容は、「知らない」と言って質問
・人に説明できないと思ったことは、「分からない」と言って質問

 その分野において自分は素人であることを認め、素直に聞くのが肝心。意外とこれが難しいというか、人に「分からない」と言うのは恥ずかしいものです。

企業内での情報収集の良しあしで差が付く

 恥ずかしさを払しょくするためには、当たり前ですが事前に勉強してからヒアリングに挑むことです。しかし最初の30分は予習してきたことをひけらかさず、聞くことに徹したほうがいいでしょう。「オレ知ってる」とか「私分かってる」というのをヒアリングで挟むと、相手は話しづらいものです。

 ヒアリングの中盤で質問をするときに「〇〇にこう書いてあったのですが……」とか「〇〇と聞いたのですが……」いう枕詞(まくらことば)を付けて質問をする。全く何も準備していない人に嫌悪感を持つ方もいるので、必要に応じて引き出しから披露すると、質問に快く対応してくださるものです。

 それでも説明を聞いて難しかった場合、私はよく「ご両親やお子さんに説明をしていると想定して話してください」とか、「素人の遠藤でも分かるように説明してください」とお願いします。そうすると大抵、「ハードル高いなぁぁ」とぼやきながら、「ざっくり言うと、〇〇ってことです」と説明してくれます。このざっくりとした説明で、全体を捉えられます。そこから細かな質問に落とし込んでいくと、ヒアリングはぐっと進めやすくなります。

 今回は担当者に話してもらうためのエッセンスをお伝えしました。ヒアリングこそが広報にとって“情報の源泉”です。企業広報として一番大切にしなければならないのは、社内での情報収集です。短い時間で終わらせるのがベストですが、分からないことは何度もヒアリングして、情報の質を高めましょう。最終的にはそれが“競合との差”となって表れるのです。