マスコミにも「稼いでもらえる材料」を用意する

 さて、プレスリリースでやらかしてはならないポイントを確認できたところで、私が初めて書いたリリースがどんなものだったのか、改めて思い出してみます。

 「〇月×日全日本レースが開催される。レースはポイントリーダーのホンダから必勝を期してエースの〇〇選手が参戦、一方ライバルのヤマハからは刺客として外国人レーサーの△△選手が国内レース初参戦。このライバル決戦に割って入るべく、カワサキ、スズキ陣営も虎視眈々(たんたん)と……」

 まあ、肝心の情報が抜け落ちているわけではないのですが、ややウザいと言いますか、主観が入り過ぎていますね。若き日の鈴木、しっかり読み物を書ききって、さぞかし気持ち良かっただろうと思いますが、「壮大なドラマ」を読み終わらないと何が発表内容なのか(何をヘッドラインにすればいいニュースなのか)分からないようでは、プレスリリースとしては不合格です。あくまで“読み物”を書くのは記者やライターです。料理に例えればリリースは材料であり、それを味付けし、盛り付けをするのが記者・ライターの仕事だと思います。

 そこでマスコミが求めている材料ですが、そもそもマスコミは何を持ってビジネスを成立させているか再確認する必要があります。それは販売と広告です。記事を書いた結果、紹介したモノが売れようが売れまいが実は関係なく、あくまで面白い紙面、役に立つWebサイト、信頼できるニュースというコンテンツによって売れる媒体を作る。売れるから広告媒体としての価値が上がり、経営に必要な収入が得られるわけです。

 誤解を恐れずに言うと、良い広報とは「しっかりマスコミにも稼いでもらえる材料(ネタ)を用意できる人」なのだと思います。

 ちょっとこの発表内容ではネタとして弱いなと思ったときは、「お願い、記事を書いてちょうだい!!」と、しつこく食い下がる、泣き落とす、座り込む、死んだふりをする……。広報なら必ず実践するこうした活動を私も日々やっていますが、1回や2回はお付き合いしてもらえても、未来永劫(えいごう)有効なアプローチとは言えません。やはりネタの工夫が重要です。

 とはいえ、メディアから「稼げそうだ」と感じてもらえる要素やアングルを探すのは容易ではなく、広報永遠の悩みではないでしょうか。私が言えるのは、まだ“中二病(思春期にありがちな、自意識が過剰で背伸びした言動をとってしまうことをやゆした俗語)”の後遺症を引きずっていた頃の私のように、頑張って修飾語を駆使したハラハラ・ドキドキのドラマを書くことではない、ということくらいです。