LINE上場の発表日は潔く諦めて……

 さて、発表日のバッティングで印象深かったのが総務省の記者クラブでの一件です。総務省の記者クラブは通信系の記者が集まっている場所です。

 16年6月10日、携帯電話関連のスタートアップ企業の発表文を作った私は、記者クラブに事前予約して、プレスリリースを持っていきました。総務省のエレベーターを降りたとき、何だかザワついていたのを覚えています。とりあえず記者クラブで受付を済ませてから、話を聞いてくれる方がいないか探して歩いていました。

エンドウ:「あのー」

記者A:「そこに入れておいて!!」(ポストを指さして)

エンドウ:「あのプレスリリースをお持ちしたのですが」

記者B:「…………」(一瞬こちらを見るが、そのまま目線を戻す)

エンドウ:「あ、ここにリリース入れておきます」

記者C:「ごめんね、ビックリしたでしょう。今日はLINEの上場が発表されて、皆、かかりっきりなんだよね。ピリピリしてるよねー」

 なるほど、そういうことでしたか。「教えてくださり、ありがとうございました」と、その日は諦めて静かにリリースを配るだけ配って帰りました。

 実はソニー広報時代も同じようなことがありましたが、取る行動は同じです。天災、解散総選挙、世の中を揺るがすような事件などの時期は予測できません。LINE上場の一件も、広報的にはその類いと感じました。ウォークマンとiPodのときは、運よくライバルが同日発表ということで記事が最大化しました。

 大きな事件やニュースと自社の発表が運悪くバッティングしてしまうことはあり得ます。そんな場合は、その日の活動をある程度は諦めないといけません。記者の担当がもろかぶりなら、しつこく売り込むのは逆効果。時には潔く諦めることも肝心です。

 ネタかぶりのリスクを最小限に抑えるためには、その業界で有名な展示会やイベントの日程を事前に調べてから発表会の日取りを決めるのは当然です。1~2カ月くらい前になったら、仲の良い記者に探りを入れるのもアリです。危なそうか、そうでないか、くらいは雰囲気でつかみ取れることも多いので、失敗したくない発表の場合はリサーチを欠かさないことです。

 そして最悪の事態を想定して、発表前後の広報プランを準備したり考えたりしておくことも大切です。広報活動を発表日だけに集中させるのは、リスクが高いと覚えておいてください。