会社に危機が訪れたとき、広報は情報収集のため社内をかけずり回ります。問題の本質を完全に把握できる正確な情報こそが、最善の対策につながるからです。しかし、そんなことをしているようではまだまだ。ある格闘技漫画の名作に、「これぞ究極の危機管理」と呼べる名セリフを見つけました……。

いかなる危機も悠々と受け流したい広報ですが…… ※写真はイメージです(写真:Anna Jurkovska/Shutterstock.com)
いかなる危機も悠々と受け流したい広報ですが…… ※写真はイメージです(写真:Anna Jurkovska/Shutterstock.com)

悪いニュースを抑え込むのがゴールではない

 前回、広報の危機管理体制について平時の備えとしての対応責任部署の明確化、最終意思決定の方法などについて書かせていただきました(関連記事「会社炎上の危機に広報はどう対応すべきか 最大の敵は『組織図』」)。今回はその続きとして、会社がピンチのときに広報は会社のオフィシャルな情報発信窓口としてはもちろん、もう一つ重要な役目を持っているという話をしたいと思います。

 広報という職業柄、謝罪会見のニュースやスキャンダルはつい食い入るように見てしまいます。その中でここ数年特に気になるのが、初動で説明をして後から違う情報がボロボロ出てきて、かえって大きなバッシングを受けるというケースです。

 広報における危機管理というと、いかにマスコミのニュースを抑え込むかがゴールに思われるかもしれません。しかし本当は、起きてしまった事案の影響度に応じ、マスコミを通じて必要な説明責任を果たすことがゴールです。そこが分かっていない広報も経営者もいないと思いたいのですが、それでも初動のコメントが覆ってしまうケースは後を絶ちません。

 意図的な隠蔽は論外ですが、恐らく「なんとか説明ができそうだ」で準備を打ち切っているのではないかと思います。要するに自分たちに都合のいいように、メディアの反応を予測してしまったのではないでしょうか。

マスコミの反応を肌で知っておくべき

 危機対応に限らず、広報は会見なりプレスリリースなり、何らかの情報開示を行う際、まず関係者から徹底して情報を集めます。そこで得た事実をすべて説明する必要はなくても、最善の判断をするためには、背景を完全に理解しておくことが大切だからです。「こんなことを広報に伝えたらまずいだろう……」という感覚が社内にあるなら、そこは直ちに改善が必要です。

 その上で、マスコミがするであろう質問をすべて想定します。「広報は会社の顔だ」という言葉はよく耳にしますが、私に言わせるともう一つ「広報は会社の耳だ」という点が危機対応において非常に重要です。特に危機対応の準備段階でマスコミが何を聞いてくるのか、その説明で納得してもらえるのか、そうした判断を幹部に下してもらうには、マスコミの考え方や反応を肌で最も知っている広報の責任は重大です。

 興味深いことに回答に窮すると思われる質問になるほど、広報以外の部署の人間は甘く考えがちです。「この質問はされたくない」→「この質問はしてこない」、または「この説明で納得してもらいたい」→「この説明で納得するだろう」という置き換えが起こります。どうやら人間は危機的状況の想像を本能的に回避してしまう生物のようです。

 このとき、本能に逆らいマスコミの反応を予測し「いやいや、それを言うと今度はこう聞かれますよ」と的確にアドバイスできる広報は、本当にスキルが高いと思います。従って時に広報は会社寄りの発想でなく、会社の考え方をあえて否定的に見る視点も持っておくべきです。

 とはいえ広報も人の子。いいようにコトを終息させたいという感覚に抗えないときもあるでしょう。そうしたときに頼りになるのが同僚の広報です。

 「ちょっとこのQ&A、おかしいところがないか確認してくれない?」

 こう言ってセカンドオピニオンを求められる経験豊富な同僚がいる広報部は、なんと頼もしいチームなのかと思います。仮に広報が1人、ないしまだ経験の浅いスタッフしかいない場合、こういうときに頼りになるPR会社とお付き合いしておくとよいでしょう。いずれにしても、まず広報担当者自身がファーストオピニオンを作るべきで、そのためにはマスコミの視点を理解できるだけの接触を日ごろから図っておくべきです。