SNSに文章や写真を投稿している人も多いでしょう。使い方と考え方次第ですが、意外にも日々の投稿が広報に必要なスキルを鍛えるのに役立つのです。少し注意しなければなりませんが、ポイントを押さえれば無料で“広報トレーニング”ができます。そのコツをお教えしましょう。
SNSでトレーニング可能な4つのスキル
皆さんSNSはのぞくだけですか。それとも定期的に投稿してますか。「毎日書くことがないし、無理ですよ」と言われることが多いのですが、ささいなことでも構わないので、広報担当者なら定期的に投稿するのがいいでしょう。眺めるだけの方も多そうですが、投稿が広報スキルの訓練につながるのです。しかも無料で。
SNS活用で鍛えられる広報スキルは以下の4つです。
(1)記者の動向把握
(2)記者と話すためのきっかけ作り
(3)商品やサービスを紹介する客観的視点の養成
(4)記者とのキャッチボール
残念ながら、人の投稿を眺めているだけでは、(1)くらいしか鍛えられない。これでは宝の持ち腐れです。もったいない。
それでは細かく説明していきましょう。
(1)記者の動向把握(例えるなら、ストレッチ)
これは広報担当者の多くが実践していると思います。記者のSNSをフォローすれば、記事の傾向やその人柄が見て取れます。やり取りをチェックすることで、趣味趣向や性格などを知ることもできます。逆もまたしかりですので、気を付けないといけませんが……。
(2)記者と話すためのきっかけ作り(難易度:初級)
ソニーを辞めた後、フリーランスで広報の仕事をすることになり、一番危機感を抱いたのは『私の広報のやり方は、古臭いものになっているのではないか。後れを取るのではないか』ということでした。それまで多いときは週に数本リリースを出すこともありました。その度に新聞社やウェブメディア、雑誌、評論家、フリーランスライターの方々とコミュニケーションを取っていましたが、これが突如無くなったわけです。知っている方を誘って飲みに行くという方法もありますが、お金も続かないし、子供が小さくて時間が工面できない。発表も大企業ほど頻繁にありませんから、話しかけるきっかけもつかめない。
そこで始めたのがFacebookへの投稿です。とりあえず「遠藤は生きています」と知らせることを目的に、基本毎日投稿することに決めました。とはいえ、他の人に知らせるニュースなどそうそうありません。毎日変化があるからという理由で、「娘のお弁当」写真の投稿を続けました。
ある程度続けると、「お弁当いつも見てますよ」とか声を掛けられるようになります。そこからコミュニケーションの糸口を見つけられるようになりました。黙って眺めている方も多いので、「いいね!」の数を気にする必要はありません。1度もいいねをしないのに、「いつも見てるよ」と連絡してくださる方は案外多いのです。
まずは「ホームグラウンドで行う」こと
(3)商品やサービスを紹介する客観的視点の養成(難易度:中級)
娘が小学校に入って、お弁当を作る必要が無くなったタイミングで焦りました。
投稿するネタがない。どうしよう……。
とりあえず、私が個人的に気に入った商品やサービスを勝手に広報することにしました。誰も傷つかないですし、気に入ったものは売れてほしいし、という単純な理由です。これが実は“客観的”に商品やサービスを紹介する視点を養うトレーニングになっていたのです。これを何年も続けていたので、やらないと逆に気持ちが悪くなります。恐らく運動をずっとしていた人が、トレーニングしないと落ち着かないのと同じ感覚でしょう。
(4)記者とのキャッチボール(難易度:上級)
SNS上でのやり取りはオープンなだけに、大手企業の広報にはリスクが高い。SNSへの投稿を控えている担当者が多いのも、そのためだと思います。私もお弁当や仕事に関係のない商品やサービスの投稿をメインにしています。記者とのキャッチボールは、自分のアカウントを使った「ホームグラウンドで行う」のがよいでしょう。
相手のページに“遠征”する場合は、そこが安全な場所かどうか確認してから出掛けましょう。やり取りの内容は、誹謗(ひぼう)中傷や他の人や会社に不利益を与える可能性のある投稿さえしなければ、大抵大丈夫です。
記者とのキャッチボールは、ギャラリーのいるガラス張りの部屋で行っていることを忘れず、“手土産でも持っていく”くらいの気持ちが大切です。図らずも道場破りと勘違いされることもあります。難易度の高いトレーニングなので無理をしてはいけません。
想定外のご褒美をいただくことも……
2018年の出来事ですが、ある会社の新商品発表会用にスタッフバッジを作りました。ラミネート加工までして、褒めてほしくてSNSに載せたら、友人、記者、PR会社の友達から「スペル間違ってるよ」と連絡がたくさん入りました。「STAFF」を「STUFF」と書いてあったのに気付いていなかったのです。朝イチで作業して、無事「STAFF」バッジを作って持っていったら、来場の記者さんたちから「よく間に合ったね」とねぎらいの言葉を掛けていただきました。
そんなこんなで、ほぼ毎日、私は何かしらの投稿を続けています。広報担当の方は、個人アカウントのSNSの更新頻度を上げてみるといいでしょう。動物、食べ物、風景などなど、写真中心の投稿が始めやすいと思います。記事のシェアもいいですが、内容によっては偏った印象を与えかねないので、少し気を付けたほうがいいでしょう。