責任部署はどこ? 組織図は危機対応最大の敵

 危機対応というと、一足飛びに謝罪会見の開き方とか、お辞儀の角度はとか、ネクタイは派手過ぎずとか、そういうことに頭がいきがちかもしれません。その前に大切なのが、危機を対応せずに済ませる、いわば“初期消火”の備えです。

 平時からの準備はいくつかに分類できるのですが、まずは責任部署と権限の明確化が重要です。責任部署が分からないと、たらい回しが起こり、その間にも問い合わせと催促が広報に入り続けます。「何かあったときに表に立つのは広報」ですが、広報を支えるべき部隊がこれでは丸腰で矢面に立たざるを得ず、恐らくあまりいい対応にはならないでしょう。

 こういうと「そんな無責任な人間は自分の会社にはいない」と思うかもしれません。しかし実際に問題が発生してみると、責任の切り分けが簡単でないことを思い知らされるはずです。

 例えば電気製品の場合、各種の規格に適合しているマークを印刷しておく必要があるのですが、仮にそれがなかったとしましょう。それは設計の問題なのか、生産部門なのか、海外の生産拠点から輸入するオペレーションの責任はどうか。いやいや、対応するのはサポートの仕事でしょ、など解釈のしようは幾通りもあるものなのです。

 こうした「ポテンヒット」が生まれる原因は、普段から組織図に縛られて仕事をしていることにあると私は考えます。組織図に沿って都合よく発生してくれる問題など存在しません。「組織図こそが危機対応最大の敵」くらいの考えを、持っておく必要があります。

 いずれにしても、既にことが起こったときに責任の所在を議論していては手遅れです。平時の誰もが冷静でいるときから、この案件はこの部署、このケースではこの部署とシミュレーションしておくことが大事です。

「社長がいいと言った」が最も危険

 情報収集や顧客対応の責任部署が決まったら、次に想定すべきは、誰の権限を持って「最終回答」を公表するかという「権限の明確化」です。

 危機対応の備えとして、恐らくみなさんの会社でも最近は「危機管理委員会」的なものを組織していると思います。危機状況になった時点でしっかりした会議が招集できればいいのですが、現実に出張やら外出やらでなかなか足並みがそろわないものです。

 そうなるとメールでのやり取りが始まり、さまざまなメールのグループが出来上がる。肝心な人が入っていないまま議論が始まることもあります。その背景には、例えばまだ社長に相談するのは早いのではないか、さまつな確認メールなので幹部は外しておこう、などという心理もあるかと思います。

 その結果、一旦出した結論が後から覆る事態が発生します。最も危険なのが、「社長がいいと言った」の一言で結論とする場合です。社長は確かに最高責任者ですが、正しい判断のための十分な情報や説明がなされたのか、そのチェック機能は危機管理プロセスにおいて重要な項目です。

 こうしてつぶさに見ていくと、危機対応は単純にはマニュアル化できないと分かります。これらのチェックプロセスについては、もう少し詳しく書かなくてはなりません。次回は、「危機管理のプロセスに潜む落とし穴」の話をしましょう。