経営者が広報を兼ねるのは最強だがリスクもある

 大企業とベンチャーでは、「広報の定義」の違いもあります。

 狭義ではマスコミ対応。これは企業規模にかかわらず、どの企業でも「広報」と呼ばれる仕事だと思います。大企業の広報の仕事は、主にマスコミ対応を指している場合がほとんどでしょう。

 広義では社内、お客様やステイクホルダーに対して情報発信する“広く報じる”すべての仕事。ベンチャーや中小企業の場合、広義で語られることが多いように思います。

 大企業の場合は広報・IR・渉外・環境・お客様対応・広告宣伝などの仕事は、それぞれ個別に部署があり、分業しています。しかしベンチャーや中小企業ではこれらの業務がすべて存在するとは限らず、広報業務は兼務、1人、もしくは数人で回していることが多いのではないでしょうか。

 分業が成立している大企業の広報は楽に思えるかもしれませんが、広報担当者はかなり忙しい日々を送っています。問い合わせの数だけを見ても、皆さんが想像されているよりずっと多いのが実情です。

 誰が広報を担当するのか、という点でも違いがあります。これは大きく分けて、(1)経営者、(2)社員、(3)社外の3通りです。

 ベンチャーでは経営者自身が広報を担当している場合も多いかと思います。経営者が広報を兼務するのは、情報発信というオフェンス的には最強です。これは間違いありません。

 ただし“最強の経営者広報”になるには、圧倒的なコミュニケーション能力、客観性、時間、そして恵まれた環境がないと難しい。最強だとしても、製品の不具合や不祥事に関する説明など、不意にディフェンスを行う事態になった場合、フロントライン(経営の最前線)に近すぎることがリスクになり得ます。対応を誤り、ここが崩れてしまえばもう後がありません。最悪の場合、企業の存続さえ危ぶまれます。これは難しい……。

 大企業などある程度の規模の会社で、社員など経営者以外が広報を担当するケースが多いのは、こうしたリスクを避ける意味もあるのではないかと思います。ベンチャーの場合、フリーランスや外部に広報を委託するということもよくあります。

マスコミからの“追い風”を過信するのは危険

 大企業とベンチャー企業の報道記事の違いについてもお伝えしておきましょう。

 大企業への取材の際は、メディア側から「社会的な責任を果たしているか」という視点の質問が必ず入ってきます。それに対して、ベンチャー企業の取材の際は、「その事業を通じて、どのように経済を活性化したいと思っているのか」というような視点がメインで、応援記事が多い印象があります。ベンチャーの場合は、メディアにアプローチするまでのハードルは高いですが、それを越えてしまえば“優しい記事”を書いてもらえる可能性が高い。小さな企業に対し、ことさら厳しいことを書くマスコミなんてあまりいません。

 ただし、応援記事が永遠に続くとは限りません。何かをきっかけに、風向きが突然変わることがあります。そういう記事、思い当たるものがチラホラあるでしょう。それがコワい。

 マスコミからの“追い風”を過信するのは危険です。

 ベンチャーの場合、守りばかりに力を入れるべきだとは思いませんが、規模の小さな段階から、風向きが変化するリスクを意識しながら、ガンガン売り込んでいくのが理想だろうと思います。

 大まかですが、今回は広報担当者目線で私が思い知った大企業とベンチャーの違いをまとめてみました。一方で、会社全体という目線になると、広報業務の基本はほぼ同じという印象を持っています。マスコミが企業規模や経験に関係なく、広報業務にはある一定以上の質を求めてくるのも事実です。

 大企業の広報とベンチャーの広報において、全く違うことも多々ありますが、考え方やアプローチといった基本的なことは、どちらの広報でも活用できます。「大企業の話だから」とか「ベンチャーの話だから」と考えず、引き続き読み進めていただければ、お役に立てると思います。