テレビの取材に広報が答えるべきか

 もう一つ、広報に華があると誤解されがちなのがテレビ取材でしょう。確かに場合によっては、撮影のお約束事(編集点といわれる“間”を作ってしゃべるなど)を心得た広報担当が、カメラの前に立ってコメントするのが正解のときもあります。しかし、個人的には広報がカメラの前に立つのはあまり好ましいとは思っていません。

 取材する側からすると、広報のコメントはどうしても会社としてあるべき“理想のコメント”になるので、製品を開発した技術者やGOサインを出した経営者の生の声ではなくなります。なるべく生々しいものを使いたいという取材側のニーズを考えると、少々しゃべりが不慣れでテレビ映えが今ひとつでも、製品担当者に直接カメラの前に立ってもらうことが「良い取材」になります。

 相撲のヒーローインタビューなどが良い例でしょう。あの、ふうふう肩で息をして、何を言っているのかよく分からない力士のコメントだから良いのであって、広報がすらすらと流れるようにコメントをしてもちっとも面白くありませんね。

 社員のテレビ映えよりも広報がもっと真剣に取り組むべきは、取材設定までの準備の段階です。特にこちらから取材を打診するのは、かなり地味でかつしんどい作業です。

 朝の情報番組や流行のトレンドを作りだすファッション誌などで新商品が紹介されるのは、広報であれば誰もが目指す露出ではないかと思います。しかし当然売り込みも容易ではありません。昨今はPRエージェンシーにこうした売り込みを依頼する会社もありますが、広報の社員自らが売り込むことも大切です。

気まずい経験を重ね、大切なスキルが身につく

 まず売り込む前に、その媒体を読者・視聴者としてしっかり見ることが大事です。そもそも自社媒体を読んでもいない人から「掲載してください」などと言われても、編集者からするともう少し勉強してきてください、ということになりますので。そのうえで編集部になんとかコンタクトします。さらっと「コンタクトします」と言いましたが、ここも知名度のある大企業とベンチャーでは難易度が異なります。

広報:「えー、これこれの新製品について一度説明いたしたいのですが」

編集者:「はー、では資料を送ってくだされば拝見しますので(お断りムード)」

広報:「やはりこうした商品のご紹介は難しいのでしょうか」

編集者:「うちは10代の女性読者が多いので、紹介するのは彼女たちのお小遣いで手の届く範囲のものなんです。後ははやっていたり、雑誌の雰囲気に合っていたりするものですね。真面目な“機械モノ”とかは雑誌の雰囲気に合わないんです」

広報:「そ、そうですか。ですねー、ですよねー、失礼しました(気まずい感じで電話を終わる)」

 こんな感じの電話を5件も掛けようものなら、自分の考えがいかに安易であったかを思い知らされ、かなり気持ちは沈んでゆきます。最終的には相手と話すのが怖くなって、電話の受話器が上げられなくなることもあります。また断られるのではないか、と。

 で、実際に断られます。ただこうして気まずさを味わうと同時に、誌面を読んだだけでは分からないいろいろな情報が自分の手元に残ります。雑誌が今盛り上げようとしているテーマ、編集者の関心(仕事の余裕)、あるいは編集会議、取材、撮影、校正、印刷といったスケジュールを把握するだけでも結構役に立ちます。いうまでもなく、こうした情報は広報としてのスキルアップにつながるわけで、社内からも頼りにされ、メディアからも「この人は分かっている」という評価を得られるようになります。地味ですがこういうスキルこそが広報の「華」なのではないかと思います。