“ムヒカ来日フィーバー”の裏で抱えたモヤモヤ

佐々木 ムヒカの来日は4年前なので、まだ記憶に新しいですよね。あのときは各局、ニュースやワイドショーで連日、ムヒカの話題が取り上げられていました。

田部井 それは、プロデューサーの濱さんの手腕です。「ムヒカが話題になるためにはある程度、取材をオープンにすることは大事だ」と話していて、新聞やNHK含めた各テレビでも取り上げられました。

佐々木 連日、来日中のムヒカの姿が報道されて、あのとき田部井さんはずっとムヒカに付いていらっしゃったと思うんですけど、どんな気持ちだったんですか?

田部井 一ディレクターがムヒカの案内や動線の確認もやり、特番もやって。本当は、ムヒカにしっかり日本を見てもらいたかったんですけど……。

佐々木 映画のパンフレットには、ムヒカ来日フィーバーのとき、濱さんから見て、田部井さんは「疎外感を感じていた」と書いてありました。「みんなでムヒカを消費している」と。

田部井 ムヒカが帰国した1週間後にブックオフに行くと、もうムヒカの本が売られていたりしたので……。

佐々木 “世界で一番貧しい大統領”がやって来て、清貧の思想を呼び掛けているというような紋切り型で捉えられたり?

田部井 自分が伝えたかったことはそういうことではなかったので、「結局、不完全なままで終わってしまった……」というモヤモヤ感がありました。

ムヒカの実像を伝えるために「映画化」が動き出す

佐々木 僕も映画を見て感じたんですけど、“世界でいちばん貧しい大統領”というキャッチフレーズが本当にフィットしているのか、と。何かそのフレーズによって、ムヒカのイメージが固定化した部分もありますよね。

田部井 そうですね。おっしゃる通りです。もっと豊かなムヒカの人生観や世界観を伝えたかったんですけど、なかなかそれができない。『Mr.サンデー』でムヒカの企画を何回もやらせていただいたんですが、テレビ番組で伝えられる限界も感じて、なかなかもう一つ深い内容を伝えることができないモヤモヤを抱えていました。

佐々木 なるほど。

田部井 それでムヒカを見送った後、初めてプロデューサーの濱さんに「自分はムヒカを日々のニュースや情報番組とは違う形で撮ってみたい」と申し出たんです。

佐々木 そうした気持ちから、次第に映画化という方向へ動いていったんですね。

田部井 そうです。ムヒカへの突撃取材という発端から来日に至るまでの主語はすべて「フジテレビの……」「テレビ番組の……」という中でやってきたんですが、ムヒカが帰って「これでよかったのかな」というモヤモヤが湧き上がってきて……。ムヒカが帰国した日に濱さんと羽田空港でランチを食べていたとき、「映画化」という方向で2人の思いが重なったんです。この企画の決着は「映画化」しか道が残されていなかったというところですかね。

※第4回に続く。

(構成/佐々木 健一、人物写真/中村 宏)