あえて密着せず“サンプリング”構成で見せる

佐々木 そうした番組コンセプトを見事に“サンプリング構成”で見せているのが「東京シリーズ」ですよね。一見、さまざまな要素が羅列しているように見えて、視聴者が自然と何らかの意味や意図を受け取る構造になっている。

西村 そんなふうに見ていただけると、まさに思うツボですね。

佐々木 例えば、第4弾『東京キカイ都市』は見事ですよね。僕らはいろいろな場面で自動化・機械化された現代社会を生きていますけど、オートメーション化された機械だけをサンプリングして見せられると、だんだん“機械が奇怪なものにしか見えなくなる”。ひたすら狂った世界を見ているような気分になりましたよ。

NONFIX 東京シリーズ第4弾「『東京キカイ都市』機械×奇怪~わたしの知らない ワタシの街~」(2016年3月24日放送)(C)フジテレビ
NONFIX 東京シリーズ第4弾「『東京キカイ都市』機械×奇怪~わたしの知らない ワタシの街~」(2016年3月24日放送)(C)フジテレビ

西村 普段、見慣れたものだから余計に。タイトルの片仮名の「キカイ」は“機械”と“奇怪”を掛け合わせた形です。ベタで恥ずかしいですけどね(笑)。あと、裏テーマは、「これって本当に人間が機械を使っているのか。ひょっとして機械に使われているんじゃないか………」ということ。現代社会を生きる人たちへ、そういう球(問題提起)を投げることでした。

佐々木 「東京シリーズ」はなぜ、サンプリング構成に?

西村 まず、フジテレビの『NONFIX』という深夜ドキュメンタリー枠は、ものすごく予算がないんです。密着取材ができる額じゃないんです。それで考えたのが“スケッチ”です。つまり、いろんな東京の風景をサンプリングして見せる手法です。

NONFIX「東京シリーズ」【第4弾】『東京キカイ都市』機械×奇怪~わたしの知らない ワタシの街~(C)フジテレビ
NONFIX「東京シリーズ」【第4弾】『東京キカイ都市』機械×奇怪~わたしの知らない ワタシの街~(C)フジテレビ

佐々木 前提条件から言って、密着できるわけがない、と。

西村 はい。だから、まず描きたいテーマをタイトルと共にぶち上げて、それに沿ったものをさまざまリサーチして、構成する手法を採ったんです。

“冷めた視点”で被写体を即物的に捉える

佐々木 ただ、そうして構成された「東京シリーズ」を見ると、一貫して世の中を冷めた目で見つめる“シニカルな視点”を感じるんです。それは、まさに西村さんの視点なのだろう、と……。

NONFIX「東京シリーズ」【第5弾】『東京プライスレス』これはお金で買えますか?~わたしの知らない ワタシの街~(C)フジテレビ
NONFIX「東京シリーズ」【第5弾】『東京プライスレス』これはお金で買えますか?~わたしの知らない ワタシの街~(C)フジテレビ

西村 ああ、こじらせていますか(笑)。

佐々木 なんというか“乾いた空気”が流れているんですよね。その作家性や人間観が、あの番組のテイストとすごくフィットしていて……。

西村 乾いているのか~。

佐々木 よくあるドキュメンタリーは、被写体に向かって熱を持って接する感じですが、西村さんの「東京シリーズ」は被写体をあえて即物的に捉えているのが面白い。こじらせている西村さんの何かが投影されているようにも見える。

西村 そんな自己主張しています?(笑)

スタッフクレジット「企画・構成」に込められた意味

佐々木 「東京シリーズ」って、エンドロールに「企画・構成 西村 陽次郎」と表示されますよね? 「プロデューサー」という表記ではなくて。そこに込めたものは?

西村 これは、佐々木さんなら分かると思うんですけど、「プロデューサー」という肩書にはちょっと抵抗があるじゃないですか。

佐々木 そうですね。

西村 「東京シリーズ」に関しては、企画や構成がすごく重要だと僕の中で思っていて、でも「演出」と表記すると現場で頑張ってくれている京田宣良ディレクターに悪いし、落としどころが自分の中では「企画・構成」という肩書。もちろんプロデュースもしているけど、別にそれを主張したいわけじゃないし。

佐々木 ちゃんと企画・構成した番組については、しっかりと表示されているのがすばらしいと思いました。

西村 もちろん、僕だけの番組ではないけど、「東京シリーズ」はやっぱり僕の番組なんです。僕がいなければ生まれていないので、そこはハッキリさせておかないと。

佐々木 視聴者にとってはエンドロールなんてほぼ見てないも同然だと思うんですが、僕らみたいに番組を作っている人間からすると、エンドロールの表記って本当はもっとこだわるべきだと思っています。

西村 作り手の“印のつけ方”というか。でも、そういうことを言うと嫌われますけどね(笑)。

佐々木 なんででしょうね(笑)。どうしてテレビ業界は制作者の表記をあいまいにしたがるのか、不思議に思うことがあります。ところで、「東京シリーズ」はこれまでに5本作られてきましたけど、新作の予定は?

西村 NHKで第6弾やれないですかね?(笑) NHKでやりたい企画、いっぱいあるんですけど。

佐々木 確かに、「東京シリーズ」ってNHKで放送していても全然おかしくない番組ですね(笑)。NHKどころか、全局見渡してもあんなユニークな番組はないと思います。

※第4回に続く。

(構成:佐々木 健一、人物写真/的野 弘路)