「コンセプトを言葉にするのが難しいから番組にしているんです」。東京をユニークな視点と斬新な手法で描いてきたドキュメンタリー「NONFIX『東京シリーズ』」。番組内で度々登場するサブタイトルのようなキーワード「わたしの知らないワタシの街」の意味とは?
人の心を動かすアイデアを生み出し、効果的に伝えるには? 現役テレビ制作者の技術論に迫る本連載。聞き手はNHK『ブレイブ 勇敢なる者』シリーズなどを企画・制作するNHKエデュケーショナルの佐々木健一氏。今回のゲストは、フジテレビ『ザ・ノンフィクション』のチーフプロデューサーを務める西村陽次郎氏。これまでに手がけた番組から、こだわりの仕事論に迫る(全4回の第3回)。
サブタイトル「わたしの知らないワタシの街」の意味
佐々木 健一(以下、佐々木) 「東京」をユニークな視点と斬新な手法で描いてきた西村さんのドキュメンタリー「NONFIX『東京シリーズ』」(2013年~)ですが、番組内で度々登場するサブタイトルのようなキーワードが「わたしの知らないワタシの街」という言葉。「わたし」と「ワタシ」がひらがなと片仮名になっていますが、あれはどういう意図で?
西村 陽次郎(以下、西村) あれね……。
佐々木 やぼな質問をしました(笑)。あえて言わせちゃおう、と。
西村 「コンセプトを言葉にするのが難しいから番組にしているんです」と言いたいぐらい(笑)。何だと思います?
佐々木 東京の「午前4時」とか、東京で暮らす「外国人」、東京の「地下世界」、東京でうごめく「機械」、東京で「プライスレスなもの」など、ある視点から“東京”を見つめ直す。そして、違う自分を発見する。平仮名の「わたし」から片仮名の「ワタシ」に変わるように。勝手な想像ですが……。
西村 まあ、ほぼそうです(笑)。
佐々木 「わたしの知らないワタシの街」という言葉、番組内で結構出てきますよね?
西村 出てきますね。「普段、暮らしている街も、視点を変えて見るとこんな一面があるでしょう?」と。あえて言葉にしたことはないけど、そういう意図でした。