フジテレビ深夜のドキュメンタリー枠『NONFIX』で2013年から年1回のペースで制作され、放送されるたびに話題となる「東京シリーズ」。東京を独特な視点で切り取った同シリーズは、NTTの時報サービスやカーナビの音声などを巧みに使った、テクニック満載の番組だった。

人の心を動かすアイデアを生み出し、効果的に伝えるには? 現役テレビ制作者の技術論に迫る本連載。聞き手はNHK『ブレイブ 勇敢なる者』シリーズなどを企画・制作するNHKエデュケーショナルの佐々木健一氏。今回のゲストは、フジテレビ『ザ・ノンフィクション』のチーフプロデューサーを務める西村陽次郎氏。これまでに手掛けた番組から、こだわりの仕事論に迫る(全4回の第2回)。

第1回はこちら

佐々木 健一氏(上)
1977年生まれ。早稲田大学卒業後、NHKエデュケーショナル入社。『ブレイブ 勇敢なる者』シリーズ、『ボクの自学ノート』など特集番組を手掛け、ギャラクシー賞や放送文化基金賞、ATP賞など受賞多数。著書に『辞書になった男』(文藝春秋/日本エッセイスト・クラブ賞)、『神は背番号に宿る』(新潮社/ミズノ・スポーツライター賞優秀賞)、『雪ぐ人』(NHK出版)がある。新著は『「面白い」のつくりかた』(新潮新書)。

西村 陽次郎氏(下)
1974年生まれ。青山学院大学卒業後、富士銀行を経て、99年にフジテレビ入社。ドキュメンタリー、バラエティー、情報番組など幅広いジャンルの企画を立ち上げてきた。現在は『ザ・ノンフィクション』『ワイドナショー』『逮捕の瞬間!警察24時』のプロデューサーを務め、自ら企画した特番『目撃!超逆転スクープ』では総合演出も担う。企画・プロデューサーを務めた『東京 子育て 働く母』でNYフェスティバル銀賞を受賞。

6年かかった異色ドキュメント企画「東京シリーズ」

佐々木 健一(以下、佐々木) フジテレビ深夜のドキュメンタリー枠『NONFIX』で2013年から制作されてきた西村さんの「東京シリーズ」は毎回、「東京」を独特な視点で切り取り、毎年1本のペースで作ってこられた。

西村 陽次郎(以下、西村) そうですね、5年連続で。

佐々木 いずれもとてもユニークな切り口で、番組を見ていない人に「こんな番組だよ」と伝えにくいドキュメンタリーなんですが、どれも非常に面白い。「東京シリーズ」は、どうやって始められたんですか?

西村 もともと、僕らの世代は『NONFIX』にものすごく憧れがあって、「ドキュメンタリーって面白い」「映像って面白い」と思わせてくれたのがあの番組でした。入社6~7年目のころ、僕が初めてプロデュースした番組も『NONFIX』だったんです。それから何本か『NONFIX』で番組を作ったんですけど、僕はずっと「東京」をテーマにドキュメンタリーを作りたいと思っていて。でも、そんな企画ってなかなか通らないじゃないですか。「東京って面白いと思うんですよ」と言っても……。

佐々木 人物や事件を取り上げるんじゃなく、「東京をテーマに」と言ってもなかなか分かってもらえないでしょうね。

西村 でも、世界中から人が集まり、何でもそろっていて、世界中の料理が食べられて、おかしな文化が次々生まれる「東京」って面白いじゃないですか。

佐々木 それで、第1弾は『東京午前4時』という“誰も見ていない東京”に視点を置いた番組を作られた。

NONFIX「東京シリーズ」【第1弾】『東京午前4時~わたしの知らない ワタシの街~』(2013年2月7日放送)(C)フジテレビ
NONFIX「東京シリーズ」【第1弾】『東京午前4時~わたしの知らない ワタシの街~』(2013年2月7日放送)(C)フジテレビ

西村 東京は“24時間眠らない街”。でも、その中で「一番寝ている時間っていつだろう?」と考えて、「午前2時でも3時でもない、午前4時だな」と思って、『東京午前4時』というタイトルを付けて企画書にまとめたんです。でも、こういう企画は通らないですよね。

佐々木 通常は、なかなか難しいでしょうね。

西村 あの番組って、紙(企画書)では説明できないんですよ(笑)。だから、そんな企画がどうして実現したかというと、僕が『NONFIX』でいくつか番組を作り、それが評価されたからですね。

佐々木 まずは実績を作ってから、ということですね。

西村 はい。それに6年かかりました。でも、1回作ったらこっちのものなんで(笑)。『東京午前4時』で取り上げましたけど、テレビの「通販ショップチャンネル」って、深夜1時がゴールデンタイムなんです。コールセンターの電話が鳴りっぱなしで、午前4時になってもバンバン商品が売れているんです。

NONFIX「東京シリーズ」【第1弾】『東京午前4時~わたしの知らない ワタシの街~』(C)フジテレビ
NONFIX「東京シリーズ」【第1弾】『東京午前4時~わたしの知らない ワタシの街~』(C)フジテレビ

佐々木 そこから現代人の営みとか寂しさとか、いろんなことが見えてきますね。

西村 そのシーンに続いて、「今、本当にゴボウしかなくて、食べ物がないんです……」という深夜に支援団体にかかってくる深刻な電話相談のシーンが続く。それも、東京の午前4時の風景なんです。

NONFIX「東京シリーズ」【第1弾】『東京午前4時~わたしの知らない ワタシの街~』(C)フジテレビ
NONFIX「東京シリーズ」【第1弾】『東京午前4時~わたしの知らない ワタシの街~』(C)フジテレビ