ヒット番組『空から日本を見てみよう』『和風総本家』を企画・プロデュースしてきた永井宏明氏。『空から』の空撮画面に登場する“追っかけテロップ”など、永井氏ならではの作り込まれた世界に迫る。
人の心を動かすアイデアを生み出し、効果的に伝えるための技術とは? 現役テレビ制作者の流儀に迫る本連載。聞き手はNHK『ブレイブ 勇敢なる者』シリーズなどを企画・制作するNHKエデュケーショナルの佐々木健一氏。今回のゲストは、『空から日本を見てみよう』『和風総本家』などを企画・プロデュースしてきた永井宏明氏(番組制作会社「ユニット」代表)。その異色の経歴や仕事論に迫る(全4回の3回目)。
「空撮」の見方を変えた!手間のかかる“追っかけテロップ”
佐々木 健一(以下、佐々木) 永井さんが企画・プロデュースされた『空から日本を見てみよう』で一つお聞きしたかったのが、空撮画面に登場する建物名や地名を示す“追っかけテロップ”。あれ、今の技術なら、楽にできますけど、10年ぐらい前は編集が相当、大変だったんじゃないですか?
永井 宏明(以下、永井) 当時は、映像に目印をつけて自動的に追いかけてくれる機能が出始めたころだったんです。
佐々木 出始めてすぐにその機能を使ったんですね。
永井 空撮の映像にず~っとスクロールして付いていく追っかけテロップは、見ているだけで楽しい。「時間はかかるけど、テロップ入れられますよ」と聞いて、今までにない映像になるからやろうと決めたんです。
佐々木 確かに、今までの空撮映像とは全然違いますね。
永井 そう、あのテロップだけで見え方がガラッと変わるのがすごい。でも、追っかけテロップを表示するのに、1時間の番組でレンダリングに2日もかかっていました。
佐々木 うわ~、やっぱりそうですか。頭、おかしい番組ですよ(笑)。
永井 その手間をみると、確かにおかしいですね(笑)。
佐々木 予算が少ないと言いながらも、こだわりをもって手間をかけるところには徹底して手間をかけていたんですね。でも、あのテロップって、全部は読み切れないですよね?
永井 そうなんです。だから、あの空撮は「人によって見方は自由でいい」という作りになっているんですね。「空撮の映像って飽きるよね」とか「だるいよね」という人も当然いるんですけど、実は空撮の映像ってものすごく情報量が多いんですよ。
佐々木 確かに。
永井 景色とか、木1本とか、ゆっくり細かく見ようと思ったら、いくらでもず~っと見ていられる。逆に、粗っぽく見ようと思えばボ~ッと見られる。だから、個人個人の興味で見てもらえればいいという構えだったんです。「こう見てください」と見方を強制しない。よくあるテレビの文法は無視していたんです。