2人の“運命”を象徴するCGシーンの「野球盤」

佐々木 ビジュアルでいうと、CGシーンを今回「野球盤」のイメージにしたのは?

番組で挿入されるCGシーンは「野球盤」をモチーフにしている。(『師弟物語~人生を変えた出会い~「田中将大×野村克也」』より)(C)NHK
番組で挿入されるCGシーンは「野球盤」をモチーフにしている。(『師弟物語~人生を変えた出会い~「田中将大×野村克也」』より)(C)NHK

稲垣 あれは実は2018年、上映されて話題になった米国のホラー映画『へレディタリー/継承』からヒントを得たんです。

佐々木 あ、あの映画で「ミニチュア」が効果的に使われていましたね!

稲垣 あの映画では、ミニチュアが避けられない“運命”の象徴なんです。ミニチュアを作る人の手って、まさに“神の手”じゃないですか。

佐々木 ええ、箱庭ですもんね。

稲垣 そう。人間はある種の運命から逃れられないことを暗示していて。ノムさんがインタビューで図らずも「私と出会ったのが彼の“運命”かもしれない」と言いましたけど、ノムさんとマー君も導かれるように偶然出会って……という物語とミニチュア(野球盤)の世界観が合致するんじゃないかと。

佐々木 野球盤で“神の視点”を見せることで“運命”を演出的に表現した。

稲垣 そうですね。佐々木さんの演出も毎回そうですが、「いかに題材やテーマを抽象化して表現するか?」というプロセスがありますよね。

佐々木 そう、抽象化してデザインや表現に落とし込む作業があるんです。直接的や具体的じゃなく、視聴者に想像力で補って見てもらう表現の方が伝わることがあるので。逆に、あまり工夫がない番組って、とりあえず役者さんを使って再現ドラマにしちゃうじゃないですか。スタジオを借りて、役者さんの手配や衣装を準備して、ADが駆けずり回って。で、手間をかけて出来上がった映像はというと「超普通」(笑)。

稲垣 ですよね。CGはそれなりにコストも掛かるけど、実は再現ドラマの方が予算や手間が掛かることが多いですからね。うまくエッセンスを抽出して抽象化した表現の方が、視聴者の解釈に幅を持たせられて印象にも強く残ると思います。

『師弟物語~人生を変えた出会い~「田中将大×野村克也」』は6/19(水)21時~(NHK-BSプレミアム)にて放送予定。(C)NHK
『師弟物語~人生を変えた出会い~「田中将大×野村克也」』は6/19(水)21時~(NHK-BSプレミアム)にて放送予定。(C)NHK

(構成/佐々木 健一、人物写真/中村 宏)