人の心を動かすテレビ制作者の技術とは? NHK『ブレイブ 勇敢なる者』シリーズなどを手掛けるNHKエデュケーショナルの佐々木健一氏は「ディレクターとカメラマンはよく会話してコミュニケーションを取ることが大事。実は撮影していない時間が重要」だという。

 NHKエデュケーショナルの佐々木健一氏がテレビ制作者の技術論を丸裸にしていく本連載。今回のゲストは前回(「『グッとくる映像』の裏側 プロの仕事には入念すぎる準備が必要」)に引き続き、佐々木氏のほとんどの番組のロケで撮影を担当してきた“戦友”藤田岳夫カメラマン。ここではディレクターとカメラマンがどのようにして意思疎通を図り、良い番組を作るためにチームプレーを発揮しているかを語ってもらった。

(左)藤田岳夫氏
1971年生まれ。東洋大学卒業後、テレビ番組などの撮影・技術業務を行うインフへ入社。NHKエデュケーショナル・佐々木健一ディレクターとは2009年『国民的ことばバラエティー みんなでニホンGO!』でコンビを組んで以来、『ブレイブ 勇敢なる者』シリーズや『ケンボー先生と山田先生』など多くの番組で撮影(ロケ)を担当。2016年『Dr.MITSUYA』で「MTロケ選奨」大賞を受賞。

(右)佐々木健一氏
1977年生まれ。早稲田大学卒業後、NHKエデュケーショナル入社。『哲子の部屋』『ブレイブ 勇敢なる者』シリーズ「Mr.トルネード」「えん罪弁護士」など様々な特別番組を手がけ、ギャラクシー賞や放送文化基金賞、ATP賞などを受賞。著書に『辞書になった男』(文藝春秋/日本エッセイスト・クラブ賞)、『神は背番号に宿る』(新潮社/ミズノ・スポーツライター賞優秀賞)、『雪ぐ人』(NHK出版)などがある。

「撮影」は「よく話すこと」から始まる

佐々木 健一(以下、佐々木) ディレクターとカメラマンって、他の業界で言う“ビジネスパートナー”の関係よりもずっと濃い関係ですよね。僕はNHK関連会社のディレクターで、藤田さんは技術会社のカメラマンだから、会社は別々なんだけど。

藤田岳夫(以下、藤田) とにかく、よく話し合っていますね。

佐々木 ロケ前の打ち合わせも普通はせいぜい1回ですけど、藤田さんとは何回もやりますし、さらにロケ車でも、空港のロビーでも、メシを食いに行っているときでも、ずっと番組のことを相談していますよね。

藤田 撮影が終わって、ホテルに戻ってからも話していますからね。

佐々木 毎晩、その日撮影した内容をプレビューしながら。で、そのときに一番しゃべっているのが、実は藤田さんなんですよ。

藤田 え、そう?

佐々木 一番しゃべっていますよ! こっちはヘトヘトに疲れていて眠気で目が半開き状態なのに、藤田さんはVTRを見ながらイキイキしている(笑)。だから、僕の中では藤田さんは「おしゃべりカメラマン」(笑)。

藤田 そんなふうに思われているんだ。ビックリですよ(笑)。

佐々木 藤田さんって生真面目なイメージがありますけど、振り返ると実はむちゃくちゃおしゃべりな人。

藤田 でも、どの現場でも話せるわけじゃないんですよ。ディレクターとの相性にもよるので、「話しづらいな」という人もいるし、スタッフ同士で相談するのが嫌いな人もいる。ただ、自分はよく話す方が合っているし、話せる環境を作ってもらっていることには感謝しています。自分の意見をよく聞いてもらっているので。

佐々木 ディレクターとカメラマンって、よく会話してコミュニケーションを取ることが大事ですよね。少なくとも僕らはそうしている。そういう関係がないと、なかなかいいドキュメンタリーは撮れない。だから、実は「撮影していない時間」(=スタッフ同士で話している時間)が重要ですよね。

米国カリフォルニア州パームデザートにて。(左)音声・大畠聡氏(中央)撮影・藤田岳夫氏、(右)ディレクター・佐々木健一氏(『ブレイブ 勇敢なる者』「Mr.トルネード」撮影時)
米国カリフォルニア州パームデザートにて。(左)音声・大畠聡氏(中央)撮影・藤田岳夫氏、(右)ディレクター・佐々木健一氏(『ブレイブ 勇敢なる者』「Mr.トルネード」撮影時)

藤田 でも、こんなふうに話すと「すごく仲良しなんだね」って誤解をされるかもしれないけど、実際の現場はどちらかというと殺伐としている(笑)。

佐々木 そう、バッチバチですよね(笑)。

藤田 緊張感があって、なれ合いじゃないのがプラスに働いていると思う。

佐々木 意見を言い合えるのは信頼関係があるからで、「俺はこうしたい!」という話を100%言える間柄ですね。

藤田 ロケを進めていて「良くないな」と思うことがあったら、必ず現場で話して、すぐに解消していますよね。後で「こういうところは良くなかった」と言ったら、「じゃあ、今までの撮影は何だったの?」という話になるし、取材相手にもディレクターにも失礼だと思うので。

佐々木 藤田さんらしい流儀ですね。確かに、何でもよくしゃべっている。

藤田 逆に言うと、長い付き合いだからって「言わなくても分かるだろう」ということはない。その都度、よく話して確認していくことが大事だと思います。