映像コンテンツは「構成」から逃れられない

土方 たぶんドキュメンタリーかいわいの人で、そこまで構成について突き詰めて考えている人って少ないんじゃないですか?

佐々木 でも、編集でやっていることって、基本的に構成(ストーリーテリング)じゃないですか。何となく感覚でやっているんですかね?

土方 かもしれませんね。たぶん「ドキュメンタリー」というジャンルと「構成論」をつなげて考える人があまりにも少ないんじゃないですかね。だからなのか、この番組ってドキュメンタリーを作っている人とか、ドキュメンタリーファンからあまり評判がよくないんですよ。

佐々木 だいたい僕の番組もそうですよ(笑)。

土方 東大の上映会で怒られたのも、ドキュメンタリーファンからなんです。

佐々木 出た、出た。

土方 「これは、ドキュメンタリーなのか?」と……。

佐々木 でも、やっていることは一緒ですもん。だって、そもそも「構成」(編集)って、作り手が無数の撮影素材から抽出して、カットを意図的(作為的)に並べ替えているわけですから。ドキュメンタリーだろうと、他のジャンルだろうと、やっていることは基本的に同じなわけで。構成を考えずに作るって、万有引力の法則を無視して物理法則を語ることぐらい無理があることだと思うんですよ。やっぱり何事にも理由があるし、過去の膨大な作品から法則性が見つかっているわけじゃないですか。

土方 うんうん。

佐々木 膨大な撮影素材から抽出してタイムラインに配置する行為自体が、「構成からは逃れられない」ということを表していますからね。

土方 そうなんです。もし本当に編集意図や作り手の意志を入れないと言うなら、「ノー編集」で流すしかない。

佐々木 昔、ありましたね。「ニコ生」か何かで国会中継をそのまま流すという試みが。結局、そんなに長い時間、普通の人は見てられないんですよ。

土方 誰かが編集する時点で、その人の意志とか意図は入っちゃうし、入るものだし。

佐々木 “絶対的な客観性”なんて存在しないです。

土方 ないと思います。それは、すごく声を大にして言いたいというか。

(『さよならテレビ』より) (C)東海テレビ
(『さよならテレビ』より) (C)東海テレビ

佐々木 そもそも映像コンテンツ自体が作り手の主観からは逃れられないから、もし作り手がすごく偏った考え方で、それに基づいて作品が作られるとすごく偏ったものができてしまう。だから、作り手はまずたくさんの情報を集めて、できるだけ冷静な視点で伝えようと努力する。だけど、(作品に)自分がないかと言ったら絶対ありますからね。

土方 あります。絶対ありますね。今回、本格的に三幕構成を採用して演出したのも、テレビ業界がテーマで、報道やジャーナリズムを扱う内容だったからというのが大きいです。最終的に、作り手の“作為的な部分”を提示するという前提で、そのこと自体も作品の中に入ってくるアイデアが最初からあったので。

佐々木 なるほど。

土方 編集マンとどうやって物語を紡いでいくか、三幕構成をもとにしたストーリーテリングについてずっと相談していました。僕と編集マンの間でしか、そういう話はしていないです。プロデューサーとも、カメラマンとも、第1幕がどうとか、ミッドポイントがどうとかいう話はしていないです。

佐々木 この番組の編集マン・高見順(たかみ・じゅん)さんもすばらしいですね。番組内で「まだ、撮っとるのか~?」と言っていた人です。土方さんとは、あの大傑作『ホームレス理事長~退学球児再生計画~』(2014年)でもコンビを組んでいた。

『さよならテレビ』の編集を担当した高見 順氏 (C)東海テレビ
『さよならテレビ』の編集を担当した高見 順氏 (C)東海テレビ

土方 あの人はもともと制作部にいたのが大きいと思います。ドキュメンタリーじゃなく、エンターテインメントをやっていて、全然、違うジャンルから来ている人なので。

佐々木 以前、「地方の時代映像祭」のテレビシンポジウムの打ち上げで、編集の高見さんとお会いしたんですけど、なぜか彼、ずっと俺の横に座っていたんですよ(笑)。

土方 彼も普段、構成についてしゃべる機会がないし、そこに対して評価されることもないから楽しかったんじゃないですかね? それは僕も同じです。『人生フルーツ』を作った伏原健之(東海テレビ)も一緒です。彼もボヤいてましたけど、結局いつも「いい取材対象を見つけたね」という話になっちゃう。

東海テレビの伏原 健之氏(写真中央)(『さよならテレビ』より) (C)東海テレビ
東海テレビの伏原 健之氏(写真中央)(『さよならテレビ』より) (C)東海テレビ

佐々木 作り手が「どう描いたか?」ではなくて……。

土方 そうです。「いいネタを拾ったね」という。もちろんその通りだけど、せめて同業者はそうじゃなくて、もう一歩先の感想とか意見を述べてほしい。

佐々木 今回、自分がこの対談企画を連載していく上で考えたのは、“現場で本当に作っている人”にこだわって話を聞こうということ。土方さんというクリエイターが作らないと、『さよならテレビ』という作品はこうはならないわけで……。誰が作っても同じ番組になるわけじゃない。そんな当たり前の事実を、もっと広く知ってほしいというクリエイターとしての心情があるんです。

※第3回につづく(全4回)

(構成/佐々木 健一、人物写真/中村 宏)