本連載ではこれまで、“モノ”と“移動”のシェアリングの普及が社会に及ぼす影響について紹介してきた。今回は、“スキル”のシェアリングについて取り上げる。
スキルシェアは、個人の保有するスキルを資産として捉え、特定のスキルを必要とする雇い手と、そのスキルを保有する働き手とをつなぐものである。スキルを持つ「働き手」とそれを必要とする「雇い手」をつなぐサービスが、国内で急成長を遂げている。
スキルシェアが成長した背景には、大きく2つの要因がある。1つは、デジタル技術の進歩に伴い、個人のちょっとした空き時間を使って自身のスキルを活かせるマッチングの機会や場が提供されるようになったことである。これまでは、「雇う」「雇われる」までに時間を擁していたが、その時間が大幅に短縮された。もう1つは、働き方改革などを背景とした副業に対する受容性の高まりだ。これまでは、空き時間といえ本職として勤めている会社以外で職を持つことに心理的抵抗が強い働き手ばかりだった。
働き手と雇い手の双方で拡大するニーズを上手くマッチングしているサービスの代表例が「ココナラ」である。利用者が、直近3年間で3倍の100万人にまで達している。他の「エニタイムズ」のようなサービスでよく利用されている部屋の掃除や調理などの家事代行を例にとると、人生100年時代を迎えつつある中で、シニアが部屋の掃除などの働き口をより求めるようになっていることが挙げられる。自身の家事スキルを用いた仕事を見つけたいと考えているわけだ。一方で雇い手側は、共働き世帯の増加などの社会変化を背景に、家政婦を雇うほどでもないちょっとした家事を外注したいと考えるようになっている。
こうした双方のニーズはマッチングされてこなかった。若年の共働き世帯は女性が睡眠時間を削って家事を行い、シニア世帯では働くこと自体を諦めるか、レジ打ちなどの新たなことを学び直してパートに出るしかなかった。
スキルシェアでは、働き手はパートのような時間の切り売りではなく、得意なことを仕事として認めてもらって稼げるようになる。場合によっては、パートよりも時給が高くなることもある。
このようにスキルシェアは、変化している現代日本の実情にうまくはまっており、その結果として受け入れられている。家事代行だけでなく、結婚式での記念ムービー作成やSNS向けの写真撮影など、スキルシェアを利用する場面は広がりつつある。
急成長する「企業対個人」のスキルシェア
中でも進展しているのは、雇い手が企業となるスキルシェアだ。個人と企業を結ぶスキルシェアの市場規模は、個人と個人を結ぶスキルシェアの2~3倍の規模にまで育っている。
難易度の低いスキルから、企業経営にまつわる高度なスキルまで幅広いニーズに応えることができる。高度なスキルの一例は、「中小企業の海外進出戦略策定支援」だ。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。