本連載ではここまで、フリマアプリなど小売りを中心とした「モノのシェアリング」について紹介してきた。今回は、日本の一大産業であるモビリティーにフォーカスし、移動のシェアリングについて取り上げる。新たなサービスの勃興により、最近注目を集めているMaaS(Mobility as a Service)についても紹介したい。
シェアリングビジネスの先駆けは、「Uber」や「Lyft」「Grab」といったライドシェアサービスだろう。先進国ではスマホ1つで呼べる利便性が支持され、“ボッタくり”タクシーが多く走っている途上国では支払金額が事前に分かり安心して利用できる点が斬新だった。現地の言葉が分からなくても運転手に行き先を告げずに利用できることから、旅行客の間でも人気となり爆発的に普及した。
日本では、法規制の問題からライドシェアは認可されていない。ただ「無償型ライドシェア」という形ながら、実は国内でもサービスの提供が始まっていることをご存じだろうか。
1つ目の例はnotteco(東京・千代田)のサービスだ。一般のドライバーが同じ方面に移動する人を相乗り相手として募ってマッチングしてくれる。ガソリン代や高速代など実費の範囲内で費用を割り勘し、利用者が料金として支払う仕組みである。
タクシーやバスなど人を運んで対価を受け取るサービスは「有償旅客運送行為」と呼ばれ、普通二種免許を取得したドライバーが事業用の車で運行することが法律で定められている。しかし、nottecoのように対価を受け取らずに実費を割り勘するだけなら、一般車両を運転する一般ドライバーがライドシェアを行っても法的な問題はない。
nottecoは全国どこでも使え、会員数は4万人を突破した。主に旅行先の観光地や音楽フェス会場などとの往復で、中・長距離移動したい人が多く利用しているという。
謝礼を支払うライドシェアなら既に実現
2つ目の例として取り上げたいのがAzit(東京・港)が提供する「CREW」だ。都内の一部と鹿児島県・長崎県の一部地域で提供している、一般ドライバーによる相乗りサービスだ。こちらも、利用にかかる費用であるシステム利用料とガソリン代といった実費に対して、利用者が運賃ではなく任意の「謝礼」をドライバーに支払う仕組みになっている。
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