本連載の第3回では、シェアリング時代の新しい消費モデル「SAUSE(ソース)」を紹介した。SAUSEに沿って行動する消費者は、購入したモノを評価し再販売するため、モノを提供するメーカーにとって無視できない存在になる。では、シェアリング時代にメーカーはブランド戦略をどう変化させていくべきだろうか。今回はこの課題について考えてみたい。

シェアリングビジネスの普及は、メーカーにブランド戦略練り直しを迫っている(写真/Shutterstock)
シェアリングビジネスの普及は、メーカーにブランド戦略練り直しを迫っている(写真/Shutterstock)

 シェアリング時代における新しい消費者行動の特徴は、「所有」から「利用」への変化にある。結果、一時利用後に売却することを前提としたモノの「購入」が普及する。

 これにより新品を購入する際には、目の前に提示された価格から、売却で期待できる金額を引いて買うべきか判断するようになる。購入金額から売却金額を引いた結果を「利用対価」と捉えて商品を評価するのだ。

 すると、購入できる価格帯が以前より広がることで、消費者にとっては対象の商品が拡大する。この利用対価を前提に、今まで無理だったニーズを満たす消費者が現れてくる。以下では、化粧品にお金をかける若者を紹介したい。

利用対価で測られるブランド価値
利用対価で測られるブランド価値

コスメフリークのフリマアプリ活用術

 お金を化粧品にかける“コスメフリーク”の中でも、20~30代の女性は普段からおしゃれやファッションに対する意識が高い。デジタルネーティブ世代の彼女たちは、メーキャップに関する様々な情報をネットメディアやSNSなどで収集し、知識を増やしている。

 ただ彼女たちが化粧品にかけられるお金は限られている。「流行アイテムや自分の満足のいくメーキャップが可能なアイテムをいかに賢く買いそろえるか」――。そんな悩みが常に付きまとう。話題のアイテムは百貨店を主なチャネルとする高価格帯ブランドなことが多いため、「欲しいが、ハードルが高く買えない」というジレンマを抱えながら、メーキャップアイテムを集めているのが現状だ。

 そんな彼女たちの悩みを解消する一助となっているのが、「メルカリ」などのフリマアプリである。高価格アイテムや、シーンまたはシーズンが偏ったアイテムでも、売却を前提に購入すれば最終的な出費が少なく経済的だ。今まで安価なコスメで上手にやりくりしていた人も、ハイブランドの商品を買いやすくなっている。

 実際、弊社の調査からも、化粧品をたくさん購入する若者のうち、フリマアプリユーザーは一次流通で新品を購入する頻度や価格帯の上がる傾向が顕著だ。フリマアプリは、使いたいアイテムを賢くそろえるためのツールの1つになっているようだ。

 利用対価の概念が浸透しつつあることで、最近の若者は新品・中古品を問わず憧れのブランドに手を伸ばすようになっている。このことは、ブランド戦略に大きな影響を与える。販売チャネルや価格帯で形成してきたブランド階層の境目があいまいになり“グラデーション化”する現象を生みだしている。

 これが何を意味するか。メーカーが戦略的に選定できた販売チャネルは、管理の行き届かないC2Cの世界にまで拡大することだ。つまり今後は販売価格を制御しにくくなる。

 マーケティング担当者が意識すべき現象をいくつか取り上げたい。購買層の裾野が若い世代に広がると、ロングセラーブランドが抱える典型的な課題である「若年層の取り込み」を解決しやすくなるのが一例だ。価格帯から従来顧客になると思っていなかった若者が顧客になる可能性あるからだ。ブランド設定とは違うターゲット層を取り込むことを念頭に置いて、マーケティング戦略を組み直さなければならない。

手の届かなかったブランドにも若者が手を伸ばすようになる
手の届かなかったブランドにも若者が手を伸ばすようになる

 一方、ブランドイメージを保つことも忘れてはいけない。購買層の裾野が広がったことで、今まで築き上げてきたイメージが大きく崩れることだけは避けなければならない。例えば30代を中心に人気の洗練されたイメージがあるアパレルブランドの場合、大学生や高校生も着るようになったら従来の顧客はどう思うだろうか。安っぽく感じられれば、次第にブランドから離れていってしまう。つまりブランド担当者は、短期的な顧客増による売り上げアップに一喜一憂してはいけない。

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