ゆうこすがさまざまな分野のプロフェッショナルからスキルやノウハウを学んでいくこの連載。今回は、ライブ配信の可能性にいち早く目を付け、インフルエンサーマーケティングのパイオニアとして業界をけん引してきたライバー取締役会長の飯田祐基さんに、ライブ配信業界を取り巻くさまざまな疑問をぶつけてもらった。

(編集部)
 ライブ配信者(ライバー)の育成やマネジメントをする事務所「321」を立ち上げた、ゆうこす。そんな彼女が気になっていた人物が、同じライブ配信業界で、番組・動画制作やクリエイターのマネジメント、PR事業を展開しているライバー(東京・港)取締役会長の飯田祐基さんだ。プライベートで親交があるとのことだが、ちゃんとビジネスの話をするのは初めてという。ライブ配信業界の今や、芸能界などを含めた事務所の在り方、ライバーを起用した効果的な番組作りのコツを聞いてもらった。

ライバー会長の飯田祐基さん(左)
ライバー会長の飯田祐基さん(左)
プロフェッショナルの紹介
今回インタビューしたのは、インフルエンサーを中心とした番組・動画制作、PR事業を展開しているライバー取締役会長の飯田祐基さん。学生だった2009年からネットラジオやニコニコ生放送の配信者として活躍し、出版社に就職後、企業チャンネルや番組・動画制作を行う。その後、22歳でライブ配信を主体としたインフルエンサーマーケティング事業を展開するテクサ(現ライバー)を設立し、現在は会長として指揮を執っている。著書には『バズる動画・ライブ配信 確実に拡散するしくみ インフルエンサーマーケティングの基本がわかる本』(ダイヤモンド社)がある。

ゆうこす Zoomをつないで一緒に筋トレをする仲なので真面目に対面すると恥ずかしいですね(笑)。今日は経営者として、真剣な話をしたいと思います! 早速ですが、飯田さんはライブ配信業界にいち早く参入されましたよね? どのような経緯で起業されたのですか?

飯田祐基さん(以下、飯田) ライブ配信に初めて触れたのは2009年からですね。当時は学生で、タレントになりたいという夢があったのですが、両親が厳しく賛成してくれませんでした。大学に入学してタレントになってから家を飛び出そうと思っていたのですが、ネットラジオやニコニコ生放送などでライブ配信を始めてみたら、街を歩いていたときに声をかけられたんです。

 普通、タレントになるには、事務所に入ってダンスや演技などのレッスンをして、プロデューサーなど業界関係者に見いだされて、オーディションなどで何か爪痕を残す必要があります。でもライブ配信は、面白いことをすれば人気者になれる。当時弱冠18歳の僕は感激しました。

ゆうこす それはすごい! 今よりももっとテレビの力が強かったときですもんね。

テレビとネットでは求められる能力が違う

飯田 これがきっかけで、人気者になるためのツールとしてライブ配信に可能性を感じ、やがて芸能業界はライブ配信に流れていくと確信しました。それを最も実感したのは、2010年です。実は、ネットで活躍する人気の配信者たちが出演するドワンゴの自社番組があり、そこに今でもテレビで人気のある芸人さんがMCとして出演する回があったんです。

 でも、人気芸人と人気配信者のスケジュールが合わず、結局芸人さんだけが出演したのですが、人気配信者が出演する回よりも再生回数が少なかった。これを見て、ネットでは人気配信者を起用した番組を作って視聴者を集めたほうが稼げると確信しました。そして月に40番組ほど作り、1カ月で300万円ほど稼げるようになったので、起業しました。

ゆうこす ライブ配信などは、芸能人を起用したのに視聴回数が下がることはよく起こります。中国からライブ配信で物を売る「ライブコマース」のブームが日本に来たときも、芸能人を起用して、台本を用意して、商品を宣伝しても売れず……。視聴率があまり伸びなかった気がします。テレビで人気のある人がネットに来ると活躍できなくなってしまうのは、なぜなのでしょうか?

飯田 タレントの性質が違うからだと思います。例えば、歌手は歌えばそれだけで舞台が成立するように思えますが、実はとてつもない準備期間があります。漫才もそうです。長い準備期間を経てようやくネタを披露できるようになるので、「ハイ、じゃあやって!」と突然言われてできるようなものではありません。反対に、インフルエンサーは「ハイ、やってください」と言われたらやれる人。練ってしまうと逆にスベります。このスキルセットの違いが大きいと感じます。

 「ネットは能動的に見るもの」ということも重要です。例えば、ゆうこすさんのメイク動画はゆうこすさんのファンしか視聴しません。つまり見に来てくれるファンの熱量が大きい。この熱量が大きいファンと、コメントなどを通じてコミュニケーションできる能力も一般的なタレントと比べてインフルエンサーのほうが高いと言えます。

事務所は少ないのに、ライバーがどんどん増えている

ゆうこす 実は最近、事務所の在り方や、ライバーの教育などに悩んでいます。ライブ配信はスマホがあれば誰でもすぐにできる半面、すぐに辞められるという特徴もあります。長く続けてくれるタレントに所属してもらうためにはどうすればよいのでしょうか?

飯田 個人的には、事務所に所属するメリットは「経済的な安心」と「人気者になるための支援」しかないと思っています。ただ、この両方を事務所が担保するのはすごく難しい。特に経済的なところはかなりノウハウが必要で、事務所を成り立たせつつもライバーに十分還元できる仕組みを作らなければならないわけです。

 「人気者になるための支援」は、例えば私が新人ライバーだとすると、ゆうこすさんの事務所に入ると思います。理由は、今ライブ配信業界で有名なゆうこすさんのノウハウを学んだり、ゆうこすさんとコラボしたりすれば人気者になれる可能性が高いから。

 実際、「ゆうこすさんがいるから」という漠然とした理由で入所してくるライバーさんもいると思います。でも、ある程度人気が出てしまったら、ゆうこすさんの事務所に求める期待値はどんどん下がっていく。となると、事務所を辞める理由になってしまう。だから、「経済的な安心」と「人気者になるための支援」を長期間両立させるのは非常に難しい。

ゆうこす 最近、芸能界やYouTuberでも、退所や独立という話はよく聞きますよね。

飯田 最近は事務所の在り方がどんどん変わってきていて、昔は事務所が所属する人材を選んでいましたが、最近は事務所が選ばれる側になっています。海外では事務所に入所するのではなく、エージェントを雇うケースも増えています。今、あぐらをかいている事務所は潰れてしまうのではないでしょうか。

ゆうこす でもライバーは増え続けています。だから、もし金銭的な面と人気の両方を担保できるのであれば、そこが1強になるわけですよね? そう考えると、ライバー事務所の運営って、逆にめちゃくちゃブルーオーシャンだと思います!

飯田 市場原理としては最高ですよね。需要過多で供給が少なくなっているから。なかなか運営は難しいけれど、ライバーが金銭的に利益を得られて、かつ人気が出る仕組みを私たちで作っていかなければなりませんね。そう考えると、YouTubeというプラットフォームは本当にすごい。再生数が多い人気者になれば報酬もどんどん増える……、ライブ配信の世界でもこのような良いプラットフォームを考えたいですね。

ライブ配信を活用した魅力的なコンテンツを作るには?

ゆうこす そういえば以前、SHOWROOMで配信した女性誌CanCamの「CanCam Room」という番組に出演しましたが、これは飯田さんが手掛けられていましたよね? 私のライバー事務所「321」に所属しているライバーも飯田さんの番組に何度か出演していますが、(演出などが)ライバーの気持ちを理解していると感じます。企業の中にはライバーを招いてライブ配信コンテンツを作ろうと思っている人もいますので、ライバーや視聴者が喜ぶコンテンツの作り方のコツや、番組を制作するうえで心掛けていることを教えていただきたいです。

飯田 先ほど、ネットの番組は視聴者が能動的に見ると話しましたが、これは重要なポイントです。テレビと違ってネットの場合は、それこそ無限にコンテンツの選択肢がある。その中から選んでもらうには、入り口を工夫する必要があります。例えば、「特定の人が出演しているから見る」という入り口があります。

ゆうこす そもそもその人がネットにファンを抱えているかどうかってことですよね。

飯田 しかも、ファンの数と質がプラットフォームによって全然違う。ゆうこすさんの番組をABEMAでやるのとInstagramでやるのとでは、視聴者数が違うはずです。

ゆうこす 「インスタでABEMAに見に来てください」と言われても、実は違うプラットフォームに移行するのは案外ハードルが高い。普段コミュニケーションを取っているところで番組を配信したほうがいいということですよね。

飯田 プラットフォームを意識して、そのプラットフォームで人気な配信者をキャスティングすることが重要です。なので、究極的にはトークができなくても数字が上がってしまうということもあり得るのです。

 入り口だけでなく、出口を意識することも大切。離脱しないよう、どのようなコンテンツを作るかという意味ですが、コメントを書かせ続ける──つまり、コミュニケーションを取り続けるってことが重要です。例えば、私がどんなにつまらない話をしていても話しかけられている途中ではなかなか席を立てませんよね?

ゆうこす それは気まずいです……。

飯田 ネットは基本、いつ出ていってもいいメディアなので、離脱しないように、視聴者とコミュニケーションを取ることが大事。視聴者参加型の番組は非常に好評です。

ゆうこす CanCam Roomは、常に「皆さんどう思いますか?」と問いかけたり、アンケートを取ったりしていて、非常に盛り上がりました!

飯田 初出しも重要です。せっかくゆうこすさんが出演しても、YouTubeで配信しているのと同じような内容の番組だと特別感がありません。ただCanCam Roomのような特別感のある企画は、キャスティングも含めて個人の力で準備するのが難しい。だからこそ、企業がお金を出して視聴者が喜ぶものを作るとよいと思うのです。

ゆうこす それには、ネットで影響力のあるインフルエンサーや、その人に匹敵するようなテレビ界の人物をキャスティングする必要などが出てくるので、2つの業界に精通しているプロデューサーが不可欠です。事務所としては「YouTubeをずっと見ている」くらいの人を採用するのも強いと思います。

 今後ライブ配信業界が盛り上がり、芸能界からライブ配信に参入することもあると思います。芸能界のトップの人たちが先のことを考え、勇気を出してライブ配信事務所に入ったら、めちゃくちゃ強いと思います。逆にライブ配信のトップの人たちが芸能事務所に入って芸能人のスキルを学べばこれも強い。芸能界とライバーで一定期間だけでもトレードできたら面白いですよね。

飯田 それは間違いないですね。ぜひやりたいです!

ゆうこす そうすることで、テレビにも通用する強いライブ配信者が生まれたり、ライブ配信ができる芸能人が誕生したりするので、どちらの視点から見てもメリットだと思いますし、どちらの業界も盛り上がるはずです。321に芸能人が入所し、飯田さんに番組を作ってもらえば、それだけで経済圏ができますね! ちょっと本気で頑張ってみようと思います!

(写真/稲垣純也)